1 派遣社員は優秀である
私の法律事務所も一部派遣社員を活用しておりますが、もし登録型派遣が原則禁止となったら、今うちにいる派遣社員に関しては、正社員にするか、派遣契約期間満了と同時にお引き取り願うかのいずれかになるでしょう。
ところで、正社員と派遣社員を比較すると、私が観察する限り、派遣社員の意欲、パフォーマンスは総じて高いです。できることなら、うちの正社員の一部と取り替えたいと思う人材もおります。
では、どうして派遣社員のレベルが総じて高いのか、私なりに仮説を立ててみました。
仮説1 派遣社員は雇用が不安定なので、職を失わないように頑張る傾向にある。
仮説2 派遣社員は、派遣会社にとって、大事な商品なので、しっかりとした人材育成を行う傾向にある。
2 仮説1について
確かに、派遣社員の雇用は不安定です。うちは、製造業ではないし、ましてや法律事務所ですので、不景気による影響をあまり受けないという恵まれたビジネス環境にあります。
なので、雇用の調整弁として、派遣社員を活用しているわけではありません。
では、なぜ派遣社員を活用しているのかというと、「ダメ社員」を正社員にしてしまうリスクを避けるためです。不思議と採用面接の時には、大変やる気に見えた人が、いざ雇用してみると全然違う、なんていう経験は皆さんもあるかと思います。
採用時にその人物を見抜くことって本当に難しいですよね。
こんな人だって最初からわかっていたら、雇わなかったのになあ、っていう人いますよね。
だったら、派遣社員に切り替えちゃえばいい。もし、その派遣社員が使えない人材だったら、派遣会社に返せばいいですよね。「もっとまともな人間を派遣してこい!」と文句のひとつでも言ってやりましょう。次に来る派遣社員はもっとまともな人のはずです。派遣会社の信用にも関わりますから。
こうして派遣されて来た、まともな派遣社員は、派遣会社に追い返されないように頑張るはずです。そうでないと、前任者と同じように、派遣会社に返却されてしまうからです。
そうすると、雇用が不安定であるということが、一生懸命頑張る原動力になっているように思えます。
3 仮説2について
派遣会社も、取引先である派遣先企業からお叱りを受けないようにするため、派遣社員の育成・研修をしっかりやろうという動機を持ちますよね。
派遣会社にとって、派遣社員は従業員ではなく商品ですから…。法律的には雇用関係にありますが、経済的機能としては商品です。
そうだとすると、不良品を買い手(派遣先企業)につかませることがないよう企業努力をすべきなのは当然です。お客様(派遣先企業)がら満足していただけるように、不良品の発生率を下げ、商品価値を高めること(すなわち、派遣社員の訓練)が派遣会社の成功jの鍵を握っています。
もしこのようなメカニズムが働いてくれれば、派遣社員は優秀でやる気がある人材を商品として保有することができ、取引先である派遣先企業にも満足してもらえます。
私が自分の職場にいる派遣社員の皆さんを見る限り、このようなメカニズムがある程度働いているように思えます。
4 労働者も顧客満足を考える時代
私は、労働者もそろそろ顧客満足を考える時代に来ているんじゃないかと思います。
労働者の顧客は、言うまでもなく雇用している会社です。会社は、労働者にとって大事な大事な「お客様」のはずなんですね。だって給料支払ってるんですから。しかも、労働者は、普通は複数の会社に掛け持ちで勤務せず、ひとつの会社で働くので、その会社は労働者にとって重要な「お得意様」なんです。
それなのに、この事実を理解している労働者ってどのくらいいるんですかね。
労働基準法が保護してくれていることに甘えて、顧客満足を怠ってはいないでしょうか?
これからの時代は、労働者自らが自分の商品価値を磨き、顧客(雇用する企業)が満足するような人材になるべく不断の努力をしなければ生き残れない時代だと思います。
派遣社員を見ていてつくずくそう思います。
顧客満足がほとんど無視されている市場。それが労働市場なんです。