こんにちは。先日東京都心で雪が降りました。都市部で雪が降ると通勤通学の交通機関に多大な影響が出ます。では、降雪により交通機関に影響が生じた場合、会社と従業員との雇用関係にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

 雇用契約には、ノーワーク・ノーペイの原則という大原則がありますので、従業員から労働が提供されなかった以上、会社はその従業員に対して賃金を支払う必要はありません。

 ただし、会社の責任によって従業員が労働を提供できなかったといえる場合は、ノーワーク・ノーペイの原則は適用されません。この場合、使用者は、休業期間中、従業員に対して、少なくとも平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならないことになっています(労働基準法26条)。

 では、降雪により交通機関が断絶することに会社に責任があると言えるでしょうか。

 降雪は自然現象ですから、会社に責任がないのは明らかです。それによる交通機関の断絶についても会社のあずかり知らない範囲での出来事といえますので、会社に責任はないと言えます。したがって、降雪によって電車が遅れ、遅刻または欠勤した場合には「ノーワーク・ノーペイ」の原則が原則通り適用され、会社が賃金をカットすることが法的に認められるということになります。

就業規則で定められている場合

 もっとも、会社の就業規則に「第●条 次の事由により、欠勤、遅刻又は早退したときは、精皆勤手当、年次有給、休暇日の算定については欠勤等の扱いをしない。・・・天災地変、交通遮断その他これに準ずる災害により、やむをえないと認めたとき。」などと定めがある場合は別の考慮が必要です。

 就業規則によって、法律よりも従業員を優遇する内容を定めた場合、その会社の従業員にとっては、就業規則で定められた内容が法律上の権利となりえます。したがって、この場合は、いわゆる交通遮断休暇を従業員の権利として認めたものといえますので、会社は就業規則の内容通り欠勤等の扱いをしないようにする必要があることになります。

 大雪等の天災の場合の出勤については、従業員の自主的な判断に任せている会社が多いと思いますが、頑張って出勤した従業員と、自宅待機を選択した従業員との間で不公平感が生まれることもありますので、事前に会社の方で、大雪が降った際の勤怠処理等についてアナウンスをしておくのがよいと考えられます。