1 子供と大人のどちらが自由か

 今日は日曜日ということもあるので、難しい法律の話は横に置いて、気分転換にちょっと軽めのテーマで書きたいと思います。

 先日、大学時代の友人と久しぶりに食事をする機会があり、雑談の中で、「自分が子供の頃、早く大人になりたいと思っていたかどうか」という話で盛り上がりました。

 私の友人は、早く大人になりたかったそうです。その理由は、本人曰く、大人は自由であるが、子供は縛られている。学校に行くことも義務づけられているし、勉強もしなければならない。大人になれば、そのような拘束から解放されると思えたからだということでした。

 私は腑に落ちませんでした。

私 「子供は学校に行かなければならないけど、大人だって会社に行かなければならないんじゃないの。学校より仕事の方が大変に見えるけど…。」

友人 「いや、仕事は自分の意思でしょ。学校は大人から強制されているじゃない。そこが根本的に違うと思うよ。」

私 「仕事が自分の意思って本当か?食べていくためには仕事から逃れられないよ。他人から強制されているわけではないけど、働かなければ生きていけないから、他に選択肢がないという点では自由がないよ」

友人 「確かにそうかもしれないけれども、子供の頃はそのようには思えなかった。子供の目線から大人たちを観察して、自分の意思でやっているように思えた」

2 非行少年の心理

 私は、子供の頃、このまま時間がとまってくれればいいのになあ、と思っていました。要するに、大人になりたくなかったんですね(笑)。  誤解のないように言っておきたいのですが、決して大人と対立していたというわけではないんです。大人が嫌いだったわけではありません。両親も学校の先生もどちらかというと好きでした。まあ、結局、非行にはしってしまって、最終的には大人と対立関係になるんですけど、それは結果論です。決して、大人が嫌いだったわけではありません。

 むしろ、子供の頃は、「大人って可哀想だなあ」と思っていたくらいです。だから、大人になるのが嫌だったんですね。あんなに大変な大人の世界に行きたいとは思わなかったんです。

 これが非行に走った一番強い動機ですね。大人になったらつまらない人生が待っているんだから、少年時代くらい充実させよう、少年時代くらい自由に好き勝手なことをやろう。こう考えたわけです。
 ですから、勉強が嫌いだったというよりは、勉強などというつまらないことに大事な青春時代を浪費したくないと思ったわけですよ(笑)。貴重な時間なんで、もっと自由なことに時間を費やしたいと思ったわけです。

 おそらく、私に限らず、当時の私の不良仲間たちも同じ心理だったと思います。というのは、少年時代が過ぎて大人になったら、みんな真面目になってしまったんです。大人になったら真面目になる代わりに、子供のうちに好きなことをやろうとしてグレたわけですから。

3 大人になって背水の陣

 しかし、人間年をとっていくわけですから、いくら大人になるのが嫌でもいずれ大人になるわけです。
 そして、私も成人したわけですね。大人になってしまった!これから死ぬまでつまらない人生を送らなければならいのか!そう思うとゾッとしたわけです。
 これに対する解決策はひとつです。大人として成功を手に入れることです。そうすれば、つまらない人生を甘受している大人たちの中で、例外的に幸福な人生を歩むことができる。今さら、時計を巻き戻して子供時代に戻れるわけではありませんから…。
 このように考えて私は勉強に火がつきました。

 私が大学に進学したのは20歳の時です。定時制高校だったこともありますが、高校に通算で5年間も在籍していましたから(笑)。
 そして、大学に進学してから46歳になる現在まで勉強の人生でした。たぶんこれからも変わらないと思います。
 大学の4年間の過ごし方で卒業後の自分の人生が変わってくる。周りの大学生たちはみんな遊んでいましたが、とてもこの貴重な4年間を遊んで過ごす気にはなれませんでした。

 そして、大学を卒業してからは司法試験です。いつまでも親のすねをかじるわけにはいきませんので、自分ひとりが食べれる程度の仕事はしましたが、基本的には勉強中心の毎日でした。

 司法試験に合格して弁護士になっても勉強は続きます。
 クライアントの利益を守るためには、日々勉強なんですね。司法試験の受験科目以外の法律も勉強しなければなりません。また、過去に勉強した法律だって改正されたり、新しい法律もどんどんできたりします。勉強を継続しないと弁護士という仕事はつとまらないんですね。

 企業のクライアントのお仕事をさせてもらうためには、法律だけ分かっていたんではだめです。経済や経営のこともわからないといけない。
 そこで、大学院で経済学の勉強もしました。今は、グロービス経営大学院で経営学の勉強をしています。

 こんなに勉強ばかりして、息が詰まるのではないかと思う人もいるかもしれませんが、これが結構楽しいんですよ。
 今思うと、一番充実していなかったのが少年時代です。タイムマシーンに乗って少年時代に戻りたいなんて全然思わないですね(笑)。少年時代よりもはるかに大人になってからのほうが楽しいんです。

4 大人の魅力を子供たちにどう伝えるか

 私はもちろん教育の専門家ではありませんので、こんなことを書くのはおこがましいんですが、教育の究極的な目的って大人の魅力を子供たちに伝えていくことだと思うんですよね。
 結局、学校って大人になるための準備をする機関なわけですから。

 そして、子供たちが大人になることに魅力を感じ憧れるようになれば、ほぼ教育の目的の大半は達成していると思うんです。
 大人の世界が魅力のある楽しい世界だと分かれば、子供たちだってグレてる暇なんてありませんよ。