1 合格者数減少

 2009年9月10日、新司法試験の合格発表がありました。

 司法制度改革が司法試験の年間合格者3000人を目標にしていたことから、今年は、約2500人程度が合格するのではないかというのが大方の予想でしたが、実際の合格者は2043人にとどまりました。昨年度の合格者が2065人だったので、合格者の人数は逆に減少したわけです。ちなみに、合格率は、27.6%でした。昨年度は30%を越えていたので、合格率も低下しています。このような結果について、法務省の人事課は、「法曹資格にふさわしい能力の有無で合否を判定した結果」と回答しているそうです(2009年9月11日付日経新聞朝刊)。
 旧司法試験と比べて新司法試験の合格者数が大幅増員となったことから、裁判所や弁護士会から深刻な質の低下が指摘されていることはこれまでの新聞報道にもありました。私も以前合格者の質の低下に関して、この弁護士ブログで書いたことがあります。
 今年の合格者数や、前述の法務省人事課のコメントは、質の低下問題を裏書きしているように思います。
 おそらく来年度も同程度の合格者数にとどまるものと思われ、2010年までに年間合格者を3000人にするという目標は達成困難となりました。
 ちなみに、新司法試験では、5年以内に3回不合格になると受験資格を失うという規制がありますが、今回の受験で571人の受験生が3回目の不合格となり受験資格を失いました(前掲日経新聞)。
 弁護士会は、もともと年間合格者3000人は多すぎるという立場だったので、今回のような合格者数減少については、基本的に歓迎ムードのようです(前掲日経新聞)。

2 法科大学院の実績

 今年の新司法試験の合格者ランキングをまとめてみました。

 合格者数別ランキング     合格率別ランキング
1位 東京大学   216人     1位 一橋大学   62.9%
2位 中央大学   162人     2位 東京大学   55.5%
3位 慶応大学   147人     3位 京都大学   50.4%
4位 京都大学   145人     4位 神戸大学   49.0%
5位 早稲田大学  124人     5位 慶応大学   46.4%
6位 明治大学   96人      6位 中央大学   43.4%
7位 一橋大学   83人      7位 北海道大学  40.4%
8位 神戸大学   73人      8位 大阪大学   33.6%
9位 北海道大学  63人      9位 早稲田大学 32.6%
10位 立命館大学 60人      10位 明治大学  31.0%

 合格者数のランキングと合格率のランキングが異なるのは、法科大学院によって受験者数が異なるからです。
 合格者数だと、東大・中大・慶応の順番ですが、合格率だと慶応は5位に、中大は6位に転落します。これは、慶応と中大の受験者数が他の法科大学院と比べて多いからです。
 これを見ると、いくつか面白い発見があります。

 まず、合格率ランキングになると、1位から4位まで国立大学が独占しています。そうすると、私学トップは慶応となります。旧司法試験時代は私立大学が健闘していたのですが、新司法試験を見ると国家公務員試験と同様に国立大学の強さが垣間見えます。
 次に気がつくのは、早稲田大学が振るわない点です。旧司法試験時代は、上位1位から3位までを東大、早稲田、中大で競っていたくらい、早稲田は司法試験の御三家でした。ところが、合格者数で見ても5位、合格率だと9位まで転落しています。その原因は、早稲田の法科大学院の独自の入試にあるのではないかと私は分析しています。早稲田法科大学院の入試には、既修者コースがありません。全員が未修者として入学します。未修者コースの試験には法律科目がありませんので、法的素養のある受験生を選抜するのが制度的に困難です。既修者コースの試験は法律科目について試されるので、いわば司法試験に合格できそうな学生を確保しやすい仕組みです。なぜ早稲田が既修者コースを設けないのか、私には不思議なんですけどね。

 来年の司法試験も、このブログで取り上げたいと思います。