1 はじめに

 残念ながら、私はこの訴訟の原告・被告のいずれの代理人でもありません。
 しかし、ニュース・バリューは高いと思われますので、ブログで取り上げることにしました。私がこれから書く内容は、日弁連が発行している「消費者問題ニュース」第131号9ページの事件情報のコーナーに掲載された記事を参考にしています。

 まず、原告は、ライブドア(現在のLDH)、ライブドアマーケティング(現在のLDM)の株主で総勢3340名です。損害賠償の請求額の総額は、約230億円にものぼる大型訴訟です。

 これに対し、被告は、ライブドア、ライブドアマーケティング、堀江貴文、他の役員、監査法人など26名にも及びます。

2 原告らの主張

 原告らが主張する被告らの違法行為は、次の2点に整理できます。

・2004年12月27日提出のライブドアの有価証券報告書に虚偽記載があったこと。
・2004年10月25日から同年11月12日までの間に、ライブドアマーケティングが、虚偽の風説を流布したこと。

 虚偽記載の主な内容は、報道にもあったように、粉飾決算です。

 ところで、これらの違法行為が裁判で認定できたとしても、株主が被った損害額を具体的に立証するのは、容易ではありません。
 そこで、原告らは、一定の事実が立証されれば損害額が推定されるとする金融商品取引法第21条の2第2項を使って損害額の主張を展開したそうです。

3 裁判所の判断(東京地裁判決平成21年5月21日)

 株主の権利が害されたということで、会社法のカテゴリーでこれを書いていますが、争点は、会社法ではなく金商法です。
 まず、裁判所は、原告らが主張する被告らの前記違法行為については全面的にこれを認めたそうです。

 しかし、ハードルが高かったのは損害額です。原告らが主張していた損害額は、前記のとおり、約230億円でしたが、裁判所が実際に認容した損害額は、約76億円にとどまりました。請求額の約33%です。

 そうすると、裁判所は、原告らの請求の約67%を棄却したことになります。
 なぜ裁判所は、これだけ大幅な損害額の減額を行ったのでしょうか。
 その法的ロジックは裁量減額の規定です(金商法第21条の2第5項)。同条項は、株価の値下がりが「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下がり以外の事情により生じたことが認められるとき」には、裁判所の裁量で相当額を減額できるとしているのです。

 裁判所は、まずライブドアの株価の下落について、下落要因の3分の2は、粉飾決算以外の事情によるとして、原告らの損害額を減額しています。
 また、ライブドアマーケティングの株価の下落についても、他の下落要因もあるとして、裁判所が当初認定した損害額の約2割しか原告らの損害として認容しなかったそうです。

 この裁判は、原告ら・被告らの双方が東京高裁に控訴しています。控訴審の判断が注目されます。