1.東京都が実態調査
東京都が昨年の10月から11月にかけて、東京都内の従業員30人以上の3000事業所及びそこで働く従業員2000人に対して、サービス残業や有給休暇の消化状況等について、実態調査を行ったそうです。
まず、事業所については、「全くない」と答えた事業所が51%だったそうです。
この回答の信頼性に関しては議論の余地がありますが、全くないと言い切った事業所が51%に過ぎなかったことは注目に値します。少なくとも、49%の事業所が一定のサービス残業の存在を肯定しているか、きっぱり「ない」と断言できなかったわけですから。
また、従業員に対する調査を見ると、昨年9月の平均残業時間は23.6時間、うちサービス残業時間が平均8時間であるという回答だったそうです。そこで、昨年の9月の稼働日数を見ると、週休2日制で、9月の祝日を差し引くと、稼働日数は、20日でした。そうすると、1日平均2.時間30分のサービス残業になります。
ちなみに、有給休暇の消化率は約30%にとどまり、有給休暇を消化しにくい職場の環境があることをうかがわせます。
2.残業の労務管理
残業に対しては、通常の労働時間の賃金の2割5分増以上の割増賃金を支払わなければなりません。
サービス残業の請求が現実化するのは、通常は、サービス残業をしていた従業員が退職した場合です。
在職中は、サービス残業を請求しずらいのが普通なので、退職した場合に、これまでの過去の残業代をまとめて請求してくるのです。
もっとも、残業代も賃金の一部ですから、2年の時効で消滅しますので(労働基準法115条)、過去の残業代をまとめてといっても、時効で消滅していない直近で2年未満の残業代に限られます。
とはいっても、2年分相当の割増賃金になりますので、その従業員の給与の額にもよりますが、それなりの規模の金額になることも想定しなければなりません。
加えて、問題は、今のように不況で会社が一定のリストラを断行しなければならない場合は、特に問題です。
相当数の従業員を整理解雇するわけですから、解雇された従業員みんなが、過去の残業代をまとめて一斉に請求してきたら、解雇された人数によってはかなり高額な請求になることも予想されます。
ただでさえ不景気のため、会社も経営不振に陥っているのに、多額の残業代請求が殺到してしまうと、せっかくのリストラの効果も半減してしまいます。
不景気の時に備える意味でも、サービス残業を極力なくす努力をするか、また、サービス残業時間を軽減するなどといった管理も必要なのではないでしょうか。