1.前回までのあらすじ

 事業再生スキーム(1)では、具体的な事業再生スキームとして、DES(デット・エクィティ・スワップ)、DDS(デット・デット・スワップ)、現物出資、事業譲渡及び会社分割が考えられること、及びこれらの事業再生スキームを分類すると、以下のように分類することが考えられることをお伝えしました。

 事業のスピンアウト(放出)を行わず、その財務体質の健全化を図り事業再生を実現させるスキームとして、DES(デット・エクィティ・スワップ)、及びDDS(デット・デット・スワップ)を分類することが考えられ、事業のスピンアウト(放出)を行うことで、その事業再生を実現させるスキームとして、現物出資、事業譲渡及び会社分割を分類することが考えられます。

 その上で、前回の事業再生スキーム(2)では、DES(デット・エクィティ・スワップ)について、その概要をご説明しました。

今回は、以上の事業再生スキームの内、DDS(デット・デット・スワップ)について、その概要をご説明したいと思います。

2.DDS(デット・デット・スワップ)の概要

 DDS(デット・デット・スワップ)とは、会社の債務(Debt)を、別の条件による債務(Debt)に交換すること(Swap)を意味します。

 このように会社の債務を別の条件による債務に交換することを、英語で表現した言い方を、デット・デット・スワップといいます。DDSは英語的な表現ですので、小難しく感じられますが、DESと同様に、内容的にはシンプルです。

 DDSは、通常、金融機関が会社に対して保有する貸付債権を、他の債権者が当該会社に対して保有する債権よりも劣後する劣後債権に変更する意味で使われます。

 劣後債権に変更する「劣後」についてですが、大きく分けて2つの意味があります。

 1つは、会社の他の債権が全て完済された後に、DESを実行した債権の返済を開始するという点で「劣後」という意味があります。

 もう1つは、倒産手続が開始された際、会社の他の債権が完済された後、はじめて弁済が受けられるという点で「劣後」という意味があります。

 DDSは、DESの場合と異なり、債務としては存在し続けるものの、その劣後化を図ることによって再建可能性を高める手法です。ざっくり説明しますと、一定の要件さえ充足すれば、負債であることに変わりはないも、負債を擬似的に資本とみなすことにより、財務体質の改善を図り、再建可能性を高めることができる手法といえます。

3.DDS(デット・デット・スワップ)のメリット、デメリット

 DDSのメリットとしては、DDSが実行された範囲で、実質的に債務超過の状態が解消されるとともに、擬似的に資本が増加し、債務者区分が上位に引き上げられる点があります。これにより、従来よりは安定的な資金調達が可能になり、事業再生の実現の可能性が増加すると思います。

 DDSのデメリットとしては、DESとは異なりあくまで債務のままであるため、将来的には元本を返済しなければならない点があります。また、DDSを引き受けた金融機関は、確実に債権回収を行うために経営を監視してくると思います。DDSの実行時に「コベナンツ(遵守事項)」(売上等特定の財務指標を一定以上に維持することを約定し、違反した場合には期限の利益を喪失させたり、融資条件の見直しを図ったりする契約を意味します。)を厳格に設定するケースも考えられます。

 次回は、現物出資についてご説明したいと思います。

 なお、私事ですが、公認会計士・税理士の細田さん、司法書士の児島さん、及び行政書士の石下さんが主催する第5回独立・経営勉強会において、講師を務めることになりました。以下、前回と同じく当該勉強会の内容をお伝えさせていただきます。

 今回のテーマは「ストック・オプションの組成(法務、会計、税務の見地から)」です。

 そこで、当該勉強会では、公認会計士・税理士の細田さんと一緒に講師を務めさせていただくことによって、この複雑な分野をできる限りわかりやすく説明させていただくとともに、実務的に問題となる専門的な事項まで踏み込んで説明していきたいと思っております。

 日時は6月17日(水)18時からで、場所は東京八重洲ホールです。
 具体的な勉強会の情報は以下のブログをご参照ください。

・細田さんのブログ:http://ameblo.jp/ikp-president-blog/
・児島さんのブログ:http://ameblo.jp/ks-kojima/
・石下さんのブログ:http://ameblo.jp/fc-ishige/

 よろしくお願いいたします。