中国の債権回収における紛争解決ノウハウ ①
―――日本裁判所管轄指定を避けるべき
もし債権回収紛争が発生した場合、当事者間で友好に協議した上で解決することが望ましいですが、しかしいくら誠意を持って協議しても結論が出ない場合には、仲裁や訴訟も考えなければならないです。
中国の司法システムが信用できない理由で、安易に日本の裁判所を管轄裁判所として指定することを避けるべきだと思います。
理由は次のとおりです。
1.専属管轄権の制約
国内契約(当事者がいずれも国内企業)の場合、専属管轄権の制約があり、当然中国の裁判所が管轄裁判所となるため、日本の裁判所を管轄裁判所として指定することはできません。
2.管轄権の選択の落ち穴
もし、渉外契約(当事者の一方が外国企業)である場合、契約当事者が海外の裁判所と中国の裁判所のいれずか管轄裁判所に指定することが可能です。
実務的に中国にあるたくさんの日系中小企業は、日本の裁判所を管轄裁判所と約定したい傾向があります。実際は、これは日本企業にとって”百害があり、一利もない”約定です。
現在のところ、中国と日本の両国間に相手国裁判所の判決の執行を認める国際条約そして協議がないために、日本の判決をそのまま中国で執行することができません。そのため、もし日系企業は日本での判決を受け、負けてしまった場合、当然日本の法律にのっとり中国企業に賠償をしなければなりませんが、一方、勝った場合においても、相手企業が日本に財産を保有する場合は別として、中国裁判所において日本の判決の執行が認められないために、その勝訴判決は中国国内においては何の実務的な意味も持たないです。
実務的な対応ノウハウ
中国での裁判では、地方保護主義など理由によって、裁判官が自由裁量権を濫用するケースがまだ多数存在しており、外から影響されにくい仲裁は裁判より、ビジネス紛争を解決際の最も重要な方法として使われています。
著者プロフィール
宋煒 、経営学博士(横浜国立大学卒)、中国弁護士、2002年から日系企業の経営・法律の顧問を担当しています。 2006年、中国司法省認定の全国優秀弁護士事務所である (イコウ)弁護士事務所に入り、2007年、中国弁護士資格を取得し、2008年、日中弁護士事務所の戦略提携により、弁護士法人ALGに移動しました。