今回は、倒産時における債権回収について見ていきたいと思います。
この分野については、類型的にみても学問的見地からみても,検討すべき課題は多々ありますので、本稿はあくまで概略を述べるものである点、予めご了解ください。
さて、企業において、売掛金債権、貸付金債権を有している相手方会社が倒産してしまい、債権を回収できなくなってしまっては大変です。
そのような場合に向けた回収方法を概観して見て、いざという時に備えられるようにしておこうというのが、今回の狙いです。
倒産時に債権を回収するには、優先的な回収ができなくては、その目的を達成することは、ほぼ不可能でしょう。
優先的な回収方法として、法律上認められているのは、相殺と別除権(担保権)です。
単に、相殺といっても、倒産会社に対して債務を負っていて、これと単純に相殺することによってすべて債権回収できるのであれば、苦労はありません。そのために、どこに対しても債権額を超える債務を負っておくことは不可能でしょう。その対策として、ひとつ考えられているのがBの信用悪化が生じた場合、AのBに対する債権と、BのCに対する債権とを相殺する旨の予約をしておく(AとCは関連会社であることが多い)という方法です。ただ、この点について、否定した判例(最判平7.7.18)もあるので、やり方には注意が必要です。この点について詳しく見ていくのは、本稿の範囲を超えるものですので、また、機会がありましたら、検討していきたいと思います。
次に、別除権について見てみましょう。まず、思いつくのが抵当権ではないでしょうか。土地や建物に抵当をつけて担保を取っておけば、回収ができるでしょう。しかし、先順位の担保権がついていたり、これを求めても応じてくれなかったりすることが多くあると思われます。
そこで、対応策としては、売掛金債権の場合には所有権留保をつけておくとよいでしょう。また、動産先取特権なども活用できると思われます。その他、担保権としては、質権、会社であることによって利用できる商事留置権などもありますし、集合物動産譲渡担保や、集合債権譲渡担保なども有用であると思われます。また、業種によっては、ファイナンスリースを担保として活用する方法があると思われます。
以上、色々な手段を考えて見ましたが、結論としては、いざという時に備えてあらかじめ、それぞれに合った策を検討し、対抗策を練っておくことであると思われます。どのような策が適当であるかは、一般的に述べるのは難しいところですから、弁護士等にご相談いただければと思います。
弁護士 松木隆佳