弁護士がお答えします!
自らが費用をかけたマンションであり、賃貸物件として運用するということは、不動産投資の側面がある以上、適切な方に入居してもらいたいという気持ちは当然のことです。
賃貸借契約を最初に締結する時点では、契約自由の原則がありますので、契約を締結するか否かを自由に決めることができます。いわゆる入居審査を行い、資力や勤務先などを考慮して、賃貸借契約を締結するか否かを決定している作業は、まさしく契約自由の原則に基づいているといえます。
ただし、賃貸借契約のような継続的な契約を締結した後、それを解除したり、契約を終了したりすることは、自由ではありません。
まず、原則として賃貸期間の定めは、賃貸人も拘束されるため、契約期間が満了するまでは、賃貸借契約は継続します。したがって、一度締結した賃貸借契約が終了するのは、契約期間の満了時ということになります。そして、借地借家法は、契約期間が満了するだけでは賃貸借契約の終了事由とならないよう、契約の更新を拒絶する通知や、更新を拒絶する「正当な事由」が必要と定め、賃借人を保護しています。
正当な事由は、双方が建物を必要とする事情のほか、建物賃貸借に関する「従前の経過」も考慮されるため、賃貸借契約期間中に行われた苦情や修繕の方法、内容なども考慮対象となり得ます。
例えば、賃貸人に対して、(病床にいる賃貸人に対して)「仮病を使って会社を休んでいる。会社に告げ口して辞めさせるようにする。」、「俺の部下は200人もいる。」「目は蛇の様で盗賊の眼だ。」、「(賃貸人は)浮気している。」、などといった脅迫又は侮辱に該当するような表現を告げた裁判例では、契約の解除が認められており、このような事情は、「従前の経過」として更新を拒絶する際にも有利に考慮されうる事情といえるでしょう。
このほか、修繕を勝手に行い修繕にかけた費用の請求を一方的にしてくることや、事業用建物の例ではありますが、近隣に及ぼす騒音が通常の予想をし得ない程度の騒音や汚損を生じさせるに至った場合なども有利な事情として考慮された裁判例が存在します。
今回のご相談にあてはめると、賃借人がいう「文句」がどういった頻度で、どのような内容であるのかによって、更新を拒絶することができるか否かが大きく左右されるといえます。
賃貸借契約を締結している場合、管理会社が間に入ることが多く、賃貸人へ直接連絡することは非常に少なくなってきました。賃貸人としては、少しでも直接連絡があると煩わしい賃借人だと感じることもあるかもしれません。一方で、賃借人の中には、賃貸人に対して過剰な要求を求め、実現されなかった場合に炎上するケースもあります。
後者のような場合には、更新を拒絶できる要素が見つかるかもしれませんので、どのような要求があり、どのような言葉が向けられてきたのかを細かく確認していく必要があります。
そのほか、いずれの場合であっても、過去に賃料の支払いが遅れたことがあるか、現に支払っていない賃料があるか、無断で増改築していないかなどといった事情も有利な事情となりますので、確認が必要でしょう。