相談内容

 賃貸物件に居住の方から、床鳴りがするうえ、騒音がひどいと申し出がありました。
 部屋を確認したところ、確かに歩くと音が鳴っていることも確認できましたが、騒音については、確認できませんでした。
 床鳴りや騒音について、修繕するための工事を提案したのですが、一時退去することを拒まれてしまい、修繕させてもらえません。
 そのような状況の中、入居者の方から、賃料の減額を求める書面が届きました。修繕もさせてもらえず、対策もできない中で、家賃の減額に応じなければならないのでしょうか。

回答

 借地借家法32条は、

「建物の借賃が、租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の借賃に比較して不相当となったときは、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」

 と定められており、賃借人からは、当該条文を根拠に賃料の減額請求権が認められていますので、同条を根拠に賃料減額を求めてくる例も見受けられます。

 今回のご相談内容でも、賃料の減額が求められていますが、経済的事情や近隣と比較して不相当であるというわけではなく、この条文を根拠に減額請求をできる根拠は示されていません。したがって、賃料減額を求めるには別の根拠が必要ということになります。
 建物の賃貸借契約においては、一定の面積や区画を賃貸の目的に沿って利用できる状態で貸すことの対価として、賃料の支払いを受けることができます。したがって、利用目的に適する状況で貸すことで、賃料を請求することができるということになります。

 そこで、今回のご相談内容において、賃料の減額の根拠となりうるとすれば、床鳴りや騒音によって、建物の利用が阻害された区画や時間帯があれば、そもそも、賃料が発生しないこととなり、賃料の減額が認められうると考えられます。
 しかし、床鳴りについては、生活に支障を来たすほどの事態が生じるとは考えがたく、騒音についても、頻繁に生じており部屋自体を使用しがたい状況が継続していない限り、賃料支払い義務を免れるほどの状況とは考えがたいといえます。

 なお、修繕を拒否されていますが、賃貸人が修繕義務を負担している反面、賃借人は賃貸物の保存に必要な行為を使用とするときは、これを拒むことはできないとされており(民法606条)、賃借人に対して修繕に協力することを強く求めていくべきでしょう。