相談内容
賃貸物件に荷物を残したまま、賃借人の行方が分からなくなってしまいました。幸いなことに、父親である連帯保証人とは連絡が取れたので、行方も聞いてみたのですがやはり父親でも知らないという状況で、部屋が使われていないにもかかわらず片付けることができません。
父親もこれ以上賃料が発生し続けることに嫌気がさしており、部屋を片付けて明け渡したいと言ってくれており、父親に部屋を片付けてもらおうと思うのですが、何か法的に問題はあるのでしょうか。
回答
法的に整理すべき点として、一つは賃貸借契約を終了させることができるのは誰かという点と、もう一つは賃貸物件内にある荷物を片付けることができるのは誰かという点があります。前者は契約関係の問題であり、後者は荷物の所有権が問題となります。
賃貸借契約に限らず、契約関係を終了させることができるのは契約当事者に限られます。例外的に、契約当事者から契約解除の代理権を授与された者であれば、契約を解除することができますが、たとえ連帯保証人であったとしても当然に代理権を有しているとは言えません。そのため、たとえ、父親が賃貸借契約を解除しようとした場合であっても、契約解除の効力は発生しないこととなります。また、約款において契約解除の代理権を連帯保証人に与えている例もありますが、賃借人本人の意思に反して代理権を行使することは、賃借人と連帯保証人の間に紛争を生じさせるおそれがあり、当該約款の定めに基づいて解除を行うことはお勧めできません。
また、所有権についてもその放棄等の処分をすることができるのは、所有権を有する者のみです。したがって、荷物の所有権は、あくまでも賃借人本人に帰属していることからすると、たとえ、連帯保証人であり、父親でもあるとしても、他人の所有物を本人の同意なく撤去することは違法と考えられます。そのため、当該荷物の撤去に当たり鍵の開錠や搬出の協力を行った場合は賃貸人や管理会社も不法行為責任が及ぶ可能性があると言わざるを得ません。 このような場合には、賃貸借契約の解除を行ったうえで、裁判を提起し、行方不明であることを立証して公示送達手続きを経て、速やかに裁判所の判決を取得することが解決に向けた近道となるでしょう。