皆さんこんにちは。今日は保釈について網羅的に解説をしたいと思います。
身体を拘束し、自由を制限される勾留は、非常に不利益が大きい処分といえます。特に、家族、 職がある被告人にとっては、保釈の成否が非常に気になるところです。
さて、保釈には、権利保釈、裁量保釈、義務的保釈があります。権利保釈は、刑事訴訟法に規定されている除外事由がない限りは、保釈をしなければならないというものです(刑事訴訟法89条)。この除外事由には、「被告人が死刑または無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき」、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」、「被告人の氏名または住居がわからないとき」などがあります。弁護人は、除外事由非該当である旨を説得的に保釈請求書に書いていきます。
職権保釈は、裁判所の裁量で、適当と認める時に保釈を許可するというものです。弁護人から、裁判所に対し職権保釈を促すこともありますが、あくまで裁判所の裁量なので、弁護人からの上申には限界があります。
義務的保釈は、不当に勾留が長引いたときに、請求または裁判所の職権で保釈が認められるというものです。
保釈請求に際しては、説得的な保釈請求書の他に、保釈保証金(事案に応じて額に幅があります。また、判決言渡し後に還付されます。)、身元引受人の身元引受書等が必要です。
準備が整ったら、いよいよ保釈請求です。裁判官は、保釈請求があると、検察官に意見を求めたうえで、保釈許可決定をするかどうかを決定します。
この点、保釈許可決定が出る可能性は低いと言わざるを得ないのが現状ではあります。しかし、保釈が却下された場合も、準抗告という不服申立て手続きがありますので、弁護人はすばやくこの手続の準備に移行します。
そして、めでたく保釈許可決定が出た場合は、身体拘束の根拠がなくなりますので、被告人は早期に釈放されます。この後は、許可決定時に裁判所から付された保釈条件(住居制限、旅行の制限、事件関係者との面接の禁止等)に違反しないよう、被告人は生活しなければなりません。もし、条件に反した場合、保釈を取り消され再度身体拘束を受けることになり、保釈保証金も没収されますので、保釈後の生活は注意が必要です。
弁護士 上辻遥