先日、電車内で女子高生の前に座り「握手しよう」などと話しかけ、断り切れずに女子高生が差し出した右手を掴んだとして、宮崎県迷惑防止条例違反の疑いで、男が逮捕されました。

このニュースにはみなさん驚かれたことでしょう。
そこで本日は、この事件の逮捕罪名である迷惑防止条例について述べていきたいと思います。

迷惑防止条例とは、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、都道府県民の平穏を保持することを目的に制定されたものです。
この条例で規制される行為は、卑わいな行為等、不当な金品の要求行為(たかり行為)、押売行為等、不当な客引き行為等や反復したつきまとい行為等などです。
各都道府県の条例を読むと、上記のような基本的な条文の他に、雪国ではスキー等をする際の危険行為を具体的に規制していたり、海水浴場が多い土地などでは海水浴をする際の危険行為を具体的に規制していたりしており様々です。 これらに違反したときの罰則はそれぞれですが、6カ月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金が科せられることが多いです。

それでは今回、宮崎県の迷惑防止条例はどのように規定していたのでしょうか。

第2条

何人も、道路、公園、広場、駅、興行場その他の公共の場所(以下「公共の場所」という。)又は電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、人に対し、卑わいで不安等又は著しいしゅう恥をおぼえさせるような言動をしてはならない。

なお、この場合の罰則規定は上記に記載した通りとなっております。

それでは、「卑わいで不安等又は著しいしゅう恥をおぼえさせるような言動」とはどのような行為なのでしょうか。握手はこのような行為にあたるのでしょうか。
この点に関して、最高裁平成20年11月10日の決定で『「卑わいな言動」とは、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいう』とされています。この決定では、ショッピングセンターにおいて女性客の後ろを執ように付けねらい、デジタルカメラ機能付きの携帯電話でズボンを着用した同女の臀部を近い距離から多数回撮影した行為が、被害者を著しくしゅう恥させ、被害者に不安を覚えさせるような卑わいな言動に当たるとされました。

それでは本件行為はどのように考えるべきなのでしょうか。
報道によると、逮捕された男は女子高生に対し、「高校はどこ?」「かわいいね。」などと執拗に話しかけ、その後「握手しよう」と強要しており、さらにその近くに座っていた別の女学生にも同日、同様の手口で握手を迫っていたということのようです。
上記最高裁の決定と比較して、身体の接触を強要するという点では本件の方が態様が重いといえそうですが、ただのナンパの延長ともいえそうな本件行為を被疑事実として逮捕することは行き過ぎのような気もします。

どちらにしろ、この罪名による規制はどんどんエスカレートし、拡大解釈されていきがちですので、同様の行為をしているという方はご注意下さい。