今日は、民事事件と刑事事件の関係性についてお話します。

「民事」と「刑事」、この2つは全く事件の種類が異なると思われがちです。
しかし、実際のところ、両者はたいへん密接に関係しているのです。

たとえば、「示談」。刑事事件で捜査を受けたとき、被害者との間で示談が成立しているかどうかは、起訴されるかどうかや判決の際の量刑に大きな影響を与えます。
この場合の示談とは、被害の「弁償」、すなわち民事的な損害賠償を意味します。 刑事手続は被害者を救済するための制度ではありませんが、加害者と被害者との間で民事的(つまり、金銭的)な紛争が一応の解決をみているかどうかは、刑事事件においても大きな意味を持っているわけです。

逆もまた然り。民事事件が刑事事件に発展することも決して少なくありません。
債務超過に陥った会社の法的整理として破産手続を行っている場合に、粉飾決算に基づいて金融機関からお金を借り入れているような事情があれば、債権者が詐欺として告発してくる可能性もありますし、経理上の不正を理由に解雇された従業員が解雇の無効を争って労働審判を申し立てたら、会社がその従業員を横領や背任で告訴した、というケースもあります。このような案件では、民事事件の対応はもちろんながら、刑事手続への適切な対応も不可欠です。

「刑事に強い」「民事が得意」などといった言い方で弁護士の得意分野を示すことがよくあります。特定の分野の事件を数多く扱い、知識を深めることももちろん意味のあることですが、分野にとらわれることなく、オールラウンドで手続を熟知していることも、適切な事件処理のために必要な弁護士のスキルだと思います。