弁護士の井上真理です。
刑事事件においては、どうしても弁護士が被疑者(被告人)の味方、警察や検察は被疑者(被告人)の敵、という構図で考えてしまいがちです。
そこで今日は、場合によっては警察や検察も被疑者(被告人)の味方になる、という話をしようと思います。
ある性犯罪において、被疑者の弁護と被害者に対する示談交渉をお受けしました。被疑者も被疑者の家族も、犯行を素直に認めて非常に反省しており、一生をかけても償わなければならない、もしも被害者が許して下さるのなら、とかなりの大金を用意しました。
しかし、被害者側はこのような被疑者側の態度を逆手に取り、大金を受領した後で、告訴取り下げ書、示談書にはサインしない、今後一切連絡は取らない、等と言い出し、その後一切の連絡がとれなくなりました。
幸い、被害者側との全てのやり取りは電子メールで残すか、ボイスレコーダーに保存していましたので、直ちにこれまでの全てのやり取り、示談の経緯を具体的な経過報告書と言う形で検察官に送り、被疑者側が誠実に対応し、振り込みの記録から確実に示談金を渡したことを説明しました。 すると、これまでの経過を把握した警察官、検察官が被害者側に連絡を取り、被害者を検察庁にすぐに呼び出し、検察官の目の前で示談金を受領したことを認める調書、告訴を取り下げる調書を作成してくれました。
その結果、その日のうちに告訴取り下げ、示談成立ということで、被疑者は釈放され、不起訴処分となりました。
被害者の中には、被害者という立場を悪用し、無茶や過大な要求をしてきたりする人も存在します。そのような場合でも、真の反省の気持ちから誠実に対応し、きちんと記録を残して説明すれば、警察や検察もこれを理解してくれ、味方になって被害者を説得してくれることがあります。
被害者が話に応じないといってすぐにあきらめずに、粘り強く交渉したり、誠意を提示し続けることが大切だと思います。
弁護士 井上真理