高等裁判所の判決に不服がある場合、最高裁判所に上告することができます。
たまに「最高裁まで争うぞーー」と言っておられる人がいますが、これがなかなかハードルの高い手続なのです。
本日は、最高裁に上告する手続き等について述べていきたいと思います。
上告できるのはどのような場合なのでしょうか。
①上告理由
刑事訴訟法405条
高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
一、憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること
二、最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと
三、最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと
上告は「憲法違反」や「最高裁判所の判例」に違反したときにしかできません。このように上告理由を制限した理由は、最高裁判所の負担軽減と濫上訴を防止する点にあります。
最高裁は、日本に1つしかなく、3つの部、15人の裁判官ですべての事件を担当し、常時数千件の事件を処理しています。それぞれの裁判官は、全国の弁護士が何年もかけて一審、二審を争った記録と向き合い、毎日何十件も検討しています。したがって、裁判官の負担軽減の要請は非常に強いのです。
もっとも、当事者の具体的救済をはかる必要があるので、刑事訴訟法411条各号所定の事由(法令違反、量刑不当、事実誤認、その他)によって、裁判所が職権で高等裁判所の判決を破棄することができるという制度があります。
弁護士としては、上告理由として411条各号所定の職権発動を求める趣旨の上告理由も丁寧に論じます。
②上告受理申立て
刑事訴訟法406条
最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であっても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、その判決確定前に限り、裁判所の規則の定めるところにより、自ら上告審としてその事件を受理することができる。
上告受理申立ては、上告理由がない場合であっても、最高裁の法令解釈の統一機能という要請から、認められています。
上告受理申立ては、理由があれば必ず受理されるわけではなく、最高裁が受理するかどうかを自由に決めることになっています。実務上は、民訴法上、上告受理申立ての制度が取り入れられたことに触発されてか、近時上告受理申立てが活用されるようになってきているようです。
以上のように、最高裁で審理されるのはハードルが高い手続ということが分かります。
上告はどのような手続で行われるのでしょうか。
上告も上告受理申立ても、控訴審の判決の言渡しから14日以内に行わなければなりません。判決の言渡しがあった日はこの14日には算入されないし、期間の末日が日曜日、土曜日、一般の休日等にあたるときはこれを期間に算入しません。
上告理由を書いた書面は「上告趣意書」といいます。上告趣意書は、最高裁に記録が届いた後に最高裁が提出期限を定めるため、急ぐ必要はありません。
これに対して、上告受理申立ての場合は、控訴審判決の謄本が渡されてから14日以内に上告受理申立理由書を提出する必要があり、これに遅れると、控訴審裁判所が棄却の決定をするので急ぐ必要があります。上告受理申立理由書が提出されると控訴審裁判所は、これを添付されている控訴審判決謄本とともに最高裁に送り、最高裁は上告受理をする場合は上告受理申立理由書を受け取ってから14日以内に受理決定をします。最高裁がこの期間内に受理決定をしない限り、上告受理申立は無意味となり控訴審判決が確定します。
以上より、
「上告する」というのは、言うは易しですが、
審理されるだけでもハードルが高く、さらに急がなければならないという手続であり、行うは難しな手続きだということです。