こんばんは 弁護士の坪井智之です。
 本日は、少年事件の処分の類型について書きたいと思います。

 少年事件の処分として、①不処分②保護処分③検察官送致④知事又は児童相談所所長送致⑤審判不開始があります。

①不処分

 不処分には、a保護処分に付すことができないときb保護処分に付す必要がないときがあります。aの場合にあたるのは、非行なし、所在不明等です。bの場合にあたるのは、保護的措置、別件保護中、事案軽微である場合です。

②保護処分

 保護処分にはa保護観察b児童自立支援施設又は児童養護施設送致c少年院送致があります。

 aの保護観察とは、少年を家庭や職場等に置いたまま保護観察所の行う指導監督及び補導援護という社会内処遇によって、少年の立ち直りを図ろうとするものをいいます。保護観察の期間は、原則として少年が20歳になるまで行われ、原決定の時少年が18歳を超えていれば、決定の時から2年間です。保護観察の処遇内容は、少年が月に2~3回程度保護司宅を訪ねて近況を報告し、保護司の指導や助言を受けます。保護司は、保護観察官の指示や連絡に従って、少年や家族と接触し指導するほか、少年の状況を毎月1回保護観察所に報告します。また、再犯や所在不明などの場合もその都度報告することになっています。

 b児童自立支援施設又は児童養護施設送致決定は、少年院送致決定と同様に、少年を施設に収容する保護処分です。しかし、児童自立支援施設又は児童養護施設送致決定は、児童福祉法上の要保護児童を収容するための開放施設として設けられたものであり、少年院が、家庭裁判所から保護処分として送致された少年を、強制的に収用するための施設として設けられていることと、本質的に異なる面があります。
 児童自立支援施設は、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援することを目的とする施設である。児童養護施設は、保護者のない児童、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせてその自立を支援することを目的とする施設である。

 cの少年院とは、生活指導、教科教育、職業補導、医療措置等を施すことにより、非行性の矯正を行うことを目的とする収容施設をいいます。少年院送致の期間は、原則として20歳に達するまでであり、決定がなされた際に少年が19歳を超えていれば、決定の時から1根間です。少年院での処遇の内容は施設によって若干違いがありますが、行動訓練、生活指導、健康診断、職業指導等様々なことがなされています。

③検察官送致

 検察官送致とは、以下のa~c場合に、家庭裁判所が決定をもって事件を検察官に送致することをいいます。a本人が20歳以上であることが判明した場合b調査ないし審判の結果、刑事処分を相当と認める場合c故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、少年がその罪の犯行時16歳以上であった場合であります。

④知事又は児童相談所所長送致

 知事又は児童相談所所長送致決定には、二つの種類がある。
 一つは、児童福祉法上の措置の必要を認めて行う通常の送致と強制的措置の許否を指示して行う特別の送致である。通常の送致は、家庭裁判所が調査の結果、児童福祉法の規定による措置を相当と認めるときは、決定をもって、事件を知事又は児童相談所所長に送致しなければならないとされている。
 特別の送致とは、知事又は児童相談所所長が、児童福祉法の適用がある少年についてその行動の自由を制限し、又はその自由を奪うような強制的措置を必要とするとして、家庭裁判所に送致した少年については、家庭裁判所は、決定をもって、期限を付して、これに対してとるべき保護の方法その他の措置を指示して、事件を権限を有する知事又は児童相談所に送致することいいます。

⑤審判不開始

 審判不開始とは、家庭裁判所が調査の結果、審判に付することができず、又は審判に付することが相当でないと認めるときは、審判を開始しない旨の決定をしなければならないことをいう。審判に付することができないときとは、法律上又は事実上、審判を行うことができない場合であり、非行なし、所在不明等、その他の場合に区分されます。また審判に付するのが相当でないときとは、審判に付すべき事由はあるが、少年に要保護性の存在する蓋然性が認められず、裁判官による直接審理を必要としないため、審判を行う必要性がない場合です。

 上記以外にも試験観察というのもある。試験観察は、直ちに保護観察に付するには要保護性が大きすぎ、少年院送致を選択するのも適切でない場合に、調査官が相当の期間、少年を指導監督・教育しつつ要保護性の解消・軽減を図り、結果が良好であれば事後、保護観察・不処分といった社会内処遇に委ね、不良であれば少年院送致とするための、中間的な処分をいいます。

 少年には可塑性があり、重い処罰をすればよいというものではなく、様々な要素が加味されて処分が決められます。

弁護士 坪井 智之