世の中、犯罪行為を規定し罰則を定めているのは刑法ばかりとは限りません。国の定める法律のほか、地方自治体の制定する条例についても、一定の範囲で罰則を定めることができます。
罰則付きの条例としてよく出てくるのは、迷惑防止条例と青少年保護・健全育成条例です。
多くの地方自治体が現在、青少年健全育成条例(保護育成条例)を制定しています。刑法その他の法律だけではカバーしきれない、青少年に悪影響を及ぼす行為の防止が主目的です。ところで、都道府県単位では、平成27年1月現在、長野県のみがこの青少年健全育成条例を制定しておらず、それを制定すべきかと県民の間で議論となっているようです。制定派は、近時条例がないために検挙できなかった事例が散見されることを論拠としており、反対派は自由恋愛まで一纏めに規制されかねず、教育や指導で対応すべきと主張しているようです。
未成年者の自由意思に反するわいせつ行為などは、条例に依らずとも刑法その他の法律で処罰が可能です。条例は、むしろ「経験に乏しく十分な判断能力を備えない未成年者が、後で後悔するようなことをしないように」という後見的な目的によるものと思われます。こういうことは、まず第一に教育の問題であるだろうと、確かに思われます。
とはいえ、他の都道府県が皆条例を制定する中、一県だけ規制の問題か教育の問題か議論を続け、制定反対意見がなお根強い長野県は、なかなか独特で個性的なところなのだなと感じます。
なお、長野県は青少年健全育成条例を未制定ですが、長野県内の市町村には県庁所在地の長野市など、独自に条例制定を行なっているところがあります。