今回は、「教唆犯」についてお話したいと思います。
幇助犯や共謀という言葉は聞いたことがあるかもしれませんが、教唆犯という類型もあります。

教唆犯の刑の重さ

教唆犯は「人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。」(刑法61条1項)と規定されております。ですから、教唆した者は、実際に犯罪を実行した人(=正犯)と同じ刑が科せられることになります。幇助犯ですと、実行犯の刑を減軽することになりますので(刑法63条、62条1項)、教唆の方が幇助より、刑が重いです。

教唆犯が成立するためには、①教唆行為を行い、②それによって、他人が犯罪を実行することが要件となります。

教唆行為とは?

教唆行為とは、他人をそそのかして、人に犯罪を実行する決意を生じさせることをいいます。ですので、犯罪を行うような意思を持っていない人に対してそそのかすことが必要で、もともと犯罪を行う意思を持っている人をそそのかしても、教唆とはいえないことになります。

どのような行為が教唆にあたるか?

具体的にどのような行為が教唆にあたるかは、多種多様であり、とくに決まった方法に限定されるものではありません。たとえば、犯罪を行う意思を持っていなかった人に対して「○○をやれ!」と命令することや「△△をやってくれたら100万円渡すよ!」などと利益で誘導することも教唆に該当し得ます。
どの程度具体的に犯罪を指示して行為をそそのかすかは、議論のあるところではありますが、犯罪行為の場所や日時、方法等の細部を特定する必要はないとされています。

概要、教唆の意義は以上のとおりですが、犯罪を行う意思を持っていなかった人に対して、犯罪を実行させる点で幇助とは大きく異なり、実際に犯罪を行った者と同じ刑が科される点に特色があると言えます。