2 署名・押印は慎重に
さて、ここまで読んでいただくと、「強制的に自白させられてもどうせ証拠としては使えないから大丈夫だ」と思われるかもしれませんが、今までの話はあくまでも法の建前であり、実際は自白の任意性を否定することは非常に難しいのが実情です。
なぜなら、捜査機関は自白の内容を調書にした後、被疑者に内容を読み聞かせ、被害者自身にも読んでもらった上で署名と押印を求めるのですが、署名押印をした時点で調書に書かれている内容が間違いないことを被疑者自身が認めたような外形が出来上がってしまうことになるからです。
例え捜査機関に脅されて署名押印したとしても、一度署名押印してしまった以上はこれを覆すことは容易なことではありません。もしも裁判で証拠として使われてしまったら、冤罪のおそれも生じます。
高井戸署の事件では少年の両親が機転を利かせて少年にボイスレコーダーを持たせていたために脅迫の事実が明らかになりましたが、もしも録音が無ければ後でどんなに脅されたと訴えたとしても信用してもらえなかったかもしれません。
最近は、取調べの可視化(録音・録画)も進んでおり、2019年6月までには法律で義務化される予定もありますが、対象事件が限定されている等、まだまだ課題は山積みです。
このような状況で皆さんが冤罪の被害に遭わないためには、何よりも「供述調書には迂闊に署名押印しない」ということが重要です。そもそも、被疑者には調書に署名押印しなければいけない義務はありませんし、警察官などが署名押印を強要するなど、もってのほかです。
大体合っているから、等と言う軽い気持ちで署名押印してしまうと、後で覆すことができなくなりますので、事実と違うのであればもちろん、少しでも自分の意図と違う部分があれば、臆せずに署名押印を拒否して訂正を申し出てください。
また、万が一警察官などに脅された時にはすぐに苦情を言えるように、逮捕や任意同行の時点でできる限り早く弁護士に依頼をすることをお勧めします。
昔ほどではないにしても、不当な取調べや冤罪をめぐる問題はまだまだ解決できているとは言えません。弁護士法人ALG&Associatesでは、不当な取調べや冤罪問題には断固とした態度で立ち向かっていきますので、自身やご家族が逮捕された時などは、すぐにご連絡ください。