ポケモンGOの熱狂的盛り上がりも一巡し、落ち着いているように思われますが、他方で、ポケモンGO操作中の交通事故の発生や、バス運転手などが就業中にポケモンGOを操作していたなどのニュースが毎週のように報じられています。
こうした状況について、報道では、与党の関係部会が、ポケモンGOを操作しながら運転した場合の防止策として、厳罰化を検討しているとのことです。
1 交通事故の発生状況
交通事故は、「交通戦争」と呼ばれた1960年代に深刻化し、1970年には70万件を超える交通事故が発生し、負傷者は98万人を超え、死者も2万人を超える異常事態となりました。これに対しては、道路交通法の制定や、いわゆる反則金制度の創設、交通安全教育の強化などの対策が進められ、1970年代中葉には、事故発生件数が50万件を切り、死者数も1万2000人程度にまで減少しました。
ところが、その後、運転免許取得者の増加に交通取り締まり関係予算が追い付かなかったことなどもあって、交通事故は再び増勢に転じました。この結果、1993年には交通事故死者数は再び1万5000人をうかがう状況となりました。
もっとも、自動車製造技術の改良や、救急治療の進歩等もあって、死者数は同年をピークに再び減少に転じます。しかし、交通事故発生件数は一向に減少せず、2004年には、年間95万件を超える水準に達しました。
2 悲惨な事故の発生と交通事故厳罰化の流れ
1999年に東名高速道路で、飲酒運転の加害者が運転する大型トラックが乗用車に衝突して同車を炎上させ、子供2人が亡くなる事故が発生しました。これを受けて、2001年、刑法に危険運転致死傷罪が創設され、従前の業務上過失致死傷罪(5年以下の懲役等)に比べて、大きく法定刑が引き上げられました(致傷の場合10年以下、致死の場合15年以下の懲役)。2005年には、同罪の法定刑はさらに15年以下の懲役(致傷の場合、致死の場合は20年以下の懲役)に引き上げられています。
しかし、それでも2006年には、福岡県で飲酒運転の加害者が起こした交通事故で幼児3人が死亡する事故が発生し、飲酒運転の厳罰化を求める社会的空気が醸成されました。
2007年、あらたに自動車運転過失致死傷罪が創設され、故意による交通事故の厳罰化に加えて、過失犯の場合にも従来より重い罪が科せられることとなりました(7年以下の懲役等)。