今回は、強要罪に関する裁判例(土下座をさせた事案)をご紹介いたします。
強要罪は、
「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した」
場合に成立します(刑法233条1項)。
強要罪では、いかなる行為が脅迫又は暴行を用いた「人に義務のないこと行わせ」たことに該当するのかという点が多くの場合に問題になります。
判例のなかには、辞職願を書かせた行為について強要罪の成立を認めたものがあります(昭和28年11月26日最高裁判決)。
今回は、近年ニュース等でも話題になった「土下座」をさせた事例に関するひとつの裁判例(大津地方裁判所平成27年3月18日)をご紹介いたします。
同事案は、被告人らが、ボーリング場にて、店員の接客態度が悪いと因縁をつけ、未成年と年齢確認した店員に対し「なんで今更言ってくるねん。」「未成年やって分かってたやろ。」「分かってて受付をしたんやろ。」「土下座して謝れ。」「土下座せえへんのやったら、店のもん壊したろか。」「めちゃくちゃにしたるで。」などと怒鳴りつけ、店員に土下座して謝罪することを要求し、土下座させた事案です。
本判決では上記のような被告人の土下座を要求する言動が強要罪の「脅迫」にあたり、土下座させた行為が義務のない行為に該当する旨判示し、強要罪の成立を認めております。なお、犯行態様の悪質性、結果が軽視できないこと、別罪の執行猶予期間中であること等を考慮し8か月の実刑判決となっております。