こんにちは、弁護士の坪井智之です。
 本日は前回の続きで、刑事裁判における量刑についてどのようなものが考慮されるのかを書いていきます。(前回の記事はこちら:刑事事件の量刑(1)

1.余罪

 余罪は、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料とすることは許されないが、単に被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等の情状を推知するための資料としてこれを考慮することは認められています。
 つまり、余罪は、本罪の責任の領域での情状(犯罪の動機・目的・方法・計画性等)及び予防の領域での情状(再犯可能性、悪性格等)を推認するための資料として考慮することは許されます。

2.被告人の反省

 被告人の反省は、量刑に考慮されます。事件を当初から一貫して反省の弁を述べているのか否かで裁判所の心証は変わります。

3.損害賠償

 損害賠償(示談)をしたという客観的な事実それ自体が被告人に有利な事情であり、その上でそれが被告人自身の努力や反省の態度の一環としてなされた場合はより有利な情状になります。
 他方で、被害者が示談金や損害賠償金を一切受け取らない場合には、日本司法支援センター等へ贖罪寄付への寄付が考えられます。
 これはあまり重視されるとお金で刑を買うことになり良くないのかもしれませんが、それは被害者の方と示談を行う場合であっても同じです。被害者の方も50万では示談しませんが、300万円なら示談するという方はたくさんいます。自ら寄付しようとする行為をしっかり裁判所には評価して頂きたくい思います。
 贖罪寄付を行うことで罪が軽くなるか否か不明な点があるのは確かです。しかし、当職の考えとしては、罪が軽くなる可能性があるのであれば、寄付額は少なくても弁護人としては積極的に提案すべきと考えています。

4.自白・否認

 自白は、本人の反省に基づくものであれば、量刑上、被告人に有利に考慮すると考えられています。
 他方で、否認している被告人は、罪を逃れようとしている以上、事実を認め反省している被告人よりも重く処罰するのはやむを得ないと考えられています。

5.社会の処罰感情

 社会の処罰感情を重視する傾向があります。社会の関心の強い事件では処罰は重くされることもあり、他方で、裁判の長期化等により、社会の処罰感情が鎮静化し、これが被告人にとって有利な情状になることもある。

6.社会的制裁

 被告人が社会内で既に制裁を受けた場合、被告人に有利な情状となります。例えば、会社をクビになったり、内定を取消しなったりした場合です。このような場合、犯罪を犯した結果被告人は十分罰が下っており、別途重い刑によって被告人を処罰せずとも、十分な罰を受けている評価されるものです。

7.被害者側の事情

 被害者側に落ち度ないし攻めに帰すべき事情があることは、一般に、被告人の責任を軽減する情状であると言えます。重要なのは、それが被害者側の落ち度と本当に言えるようなものか、落ち度の内容・程度です。

 以上のように様々な事情が考慮されます。情状弁護を行う際に私としては、被告人にできることは全てやろうとお話をさせて頂きます。良く被告人にそんなことをやって意味があるのですか?と聞かれます。しかし、意味がなくても意味があるかもしれなければ私は全てできることは行うべきだと思います。仮に贖罪寄付を行わずとも、執行猶予が付くような事案であったとしても、贖罪寄付をすることで執行猶予等が付く可能性が上がるだけでも、私は行った方が被告人の利益になると考えています。

弁護士 坪井 智之