刑事裁判における量刑は、被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等すべての事情を考慮するものとされている。
このようにいわば何もかも量刑事情に含まれ、裁判所の裁量に委ねるのが実務の考え方となっています。
実際上、裁判所が量刑の判断を行う際にどういう事情を考慮されるのかは、すごく大切で、当然弁護人は主張を尽くす必要があります。他方で、在宅起訴のような場合には、特に、被疑者の方と打ち合わせをし、量刑を有利にする事情を細かく見て行くようにしなければなりません。
以下、個別的量刑事情について述べたいと思います。
(1)犯罪の動機、方法及び態様
犯罪の動機、方法及び態様は、重要な量刑事情です。動機の悪質性は、その反社会性、私利私欲性、欲情性、無目的性等が考慮されます。また、犯罪の方法・態様における残忍性・執拗生、危険性、巧妙性、類似性、反復性及び模倣性等が考慮されます。
(2)動犯罪結果の大小・程度・数量
いうまでもないことですが犯罪結果の大小・程度・数量は刑を左右する重要な情状です。当然結果が大きい方が重く考慮されます。犯罪結果としては、構成要件に規定されている結果以外の結果も含まれます。例えば、強姦罪の被害者が姦淫されたというショックから自殺を行ったような場合が想定されます。
(3)被告人の性格
被告人の性格(反社会性、常習性、犯罪傾向性、粗暴性、精神的未熟性等)が、重要な量刑事情になります。
(4)被告人の一身上の事情
被告人の年齢、国籍、社会的地位、経済状態等の一身上の事情は、刑罰の個別化という観点から量刑上考慮の対象となる。なお、被告人の性別は、刑を加重も軽減もしないと考えられています。
被告人の年齢が若い場合には、可塑性があるため、刑罰による影響が大きいため、被告人に有利な事情となります。他方で、高齢者である場合、犯罪行為をしっかり自覚すべき年齢でありながら、犯行に及んだという点で、責任避難を加重する側面ありますが、老齢者の保護という特別予防の点では、被告人に有利な情状となります。
被告人が外国人である場合には、それ自体刑の量刑を加重も軽減もされるものではないが、国の文化、慣習によって背景事情や違法性の認識が異なることがあるため、慎重に考慮する必要があります。
被告人の社会的地位が高いというだけでは量刑を左右しません。しかし、裁判官や警察官等の犯罪に関わらないという高度の社会的な信頼を裏切った場合や教職員が先生という社会的立場を利用し、生徒に対してわいせつ行為等をおこなうような地位を利用して犯罪行為を行ったような場合には、責任避難を加重する要素になりえます。
被告人の経済状態については、貧困を動機とする窃盗等の場合には、軽減させる情状となりえます。
(5)被告人の前科・前歴
前科・前歴のある者、とくに同種の前科・前歴がある者については、再犯のおそれが大きいと考えられるため、刑を加重する情となります。
上記のように被告人によって置かれている状況は全く異なりますので、個別具体的な事情をしっかり見て、有益な弁護活動しましょう。続きは次回刑事ブログで・・・
弁護士 坪井 智之