1.「再逮捕」は何故許されるのか?
覚せい剤の単純所持罪により逮捕された人が、覚せい剤使用罪により「再逮捕」されるとはどういう意味なのでしょうか。
本日は覚せい剤使用罪による「再逮捕」についてご説明します。
2.身柄拘束には時間制限がある
刑事訴訟法という法律では、逮捕等の身柄拘束について厳格に時間が制限されています。無実の人が不当に長期間拘束されてはならないし、仮に有罪の者に対しても不当に長期の身柄拘束を許すべきではないからです。
また、一つの犯罪について一度逮捕した場合には、同じ犯罪事実について再び逮捕することは「原則として許されない」 と考えられています。一回逮捕した後に同じ人を何度でも逮捕できるとしたら無期限の逮捕が許されるのと同じことになってしまうからです。
3.覚せい剤の使用罪の場合
覚せい剤を所持して使用することは日常的な感覚によると一連一体の一つの事実であるようにも思われますが、法律上は覚せい剤の単純所持罪と使用罪は別々の罪であると考えられています。したがって、覚せい剤の単純所持罪で逮捕された人が覚せい剤の使用罪で「再逮捕」されることは、法的には「別の罪」による新たな逮捕として評価されるため、そもそも同じ人を同じ犯罪事実により再度逮捕していることになりません。このような理屈によって覚せい剤使用罪による「再逮捕」は当然に適法であることになります。
しかし、覚せい剤の使用の有無を調べるための尿検査の結果が早期に判明していた場合には、2つの罪に相当する身柄拘束期間が本当に必要なのか疑問な場合もあり得るところですし、一つの犯罪事実に対して一回の身柄拘束が許されるという考え方には理論上「元々無理」 な部分もあります。したがって、本当に覚せい剤使用罪による「再逮捕」が妥当なのか否かについて改めて考えてみることも有益かもしれません。
4.逮捕された場合には?
覚せい剤の事件に限らず身柄拘束を受けた場合には本人や身内の方々には大変なご負担がかかることになります。身柄拘束の期間が不当に長くなることを防止するためにも速やかに弁護士に相談されるべきだと思います。