こんにちは。あまり身近なこととは思えない「薬物」に関する犯罪ですが、薬物使用の犯罪を繰り返してしまう人の中には、自分でもなかなか気づかないうちに「薬物依存」という状態に陥っていることがあります。私が担当した覚せい剤取締法違反の被告人も同様に薬物依存に苦しんでいました。そこで今日は私が調べた薬物依存についてお話します。

 薬物依存という状態は、WHOにより世界共通概念として定義づけられています。薬物の乱用の繰り返しの結果として生じた脳の慢性的な異常状態をいうのですが、その薬物の使用をやめようと思っても渇望を自己コントロールできずに薬物を乱用してしまうのです。

 ここまでの状態に陥ってしまうと、自己抑制がきかずなかなか薬物依存状態から抜け出せず、薬物の乱用を繰り返してしまいがちになるのです。

 薬物依存は「治さなければ」元に戻らないと思った方がいいのです。慢性疾患としての糖尿病や高血圧症に近い状態だと考えられています。しかし「治す」ための特効薬がないので厄介なのです。

 例えば糖尿病では食事療法、薬物療法によって血糖のコントロールを維持することが治療とされています。
 薬物依存症の場合には、まず薬物の使用を絶ち、その後は渇望に打ち勝ちながら再使用しないように自己コントロールし続けることが治療となります。

 そのために実行すべきことは、それまでの薬物使用に関係していた状況を整理・清算すること、薬物を使わない生活を持続させることですが、依存症の人にとってはたやすいことではありません。

 一人で実行し続けることはほとんど不可能でしょう。
 そのための認知行動療法を取り入れた治療プログラムで体系的に整理清算を習得させてくれる医療施設があることをご存知でしょうか?薬物依存治療プログラムに取り組んでおられる医療施設があるのです。

 新聞でも取りあげられていましたが、最近の刑事裁判においても覚せい剤の依存症克服を支援する取り組みが評価された例があります。(神戸地裁尼崎支部平成26年4月11日判決)