利用者のATMカードの暗証番号を盗撮する目的で、ATMが設置された銀行出張所に立ち入った者に対して、建造物侵入罪の成否が問題となりました。ATMカードの盗撮目的で立ち入る行為は、外観上は、通常のATM利用者と変わりがないため、管理者の同意があったために建造物侵入罪は成立しないのではないか争われました。

 この点について最高裁は、

「管理権者である銀行支店長の意思に反するものであることは明らかであるから、その立入りの外観が一般の現金自動預払機利用客のそれと特に異なるものでなくても、建造物侵入罪が成立する」

として、建造物侵入罪の成立を肯定しました。
 外観が、一般利用客と同じであっても、盗撮目的という立ち入りが管理者の意思に反していることは、明らかであるという点を重視した判断です。
 なお、学説上は、外観からは判断できず、当該人物に対する許諾を与えていたものとして、成立を否定する見解も有力に主張されております。