1 はじめに

 犯罪被害者やそのご家族が、「犯人を処罰したい!!」と言って当法人を訪問されることがあります。

 本日は、そのための手段として刑訴法で用意されている告訴について説明していきます。

2 告訴とは

 告訴とは、被害者その他法律上告訴権を有する一定の者が、検察官または司法警察員(捜査機関)に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です(最判昭和26年7月12日参照)。

3 告訴を行うための要件

(1)被害者その他法律上告訴権を有する一定の者

 まずは、被害者、すなわち犯罪により害を被った者は告訴権者となります。これは自然人(一般人)に限られず、法人等も含まれます。

 有効な告訴を行うには、告訴の意味が理解できれば足り、強姦事件で13歳の少女に告訴能力を認めた例があります(最決昭和32年9月26日)。

 次に、被害者の他にも、未成年者が被害者の場合は親権者が独立して告訴を行うことができますし、被害者が死亡したときは、配偶者、直系の親族または兄弟姉妹が、被害者の意思に反しない限度で告訴することができます。

(2)犯罪事実を申告

 告訴においては、どのような犯罪によって、どのような被害を受けたのかが特定されていなければなりません。

 しかし、必ずしも犯罪の日時、場所、犯行の態様等を詳細に明らかにする必要はなく、どのような犯罪事実を申告するのか特定されればそれで足ります。

 窃盗罪においては、被害者のしらない間に犯行に遭うのが通常であり、暗闇の中で犯された強姦罪においては、被害者にとっても犯人を特定することはできず、あるいは誤認することもありますので、犯人の特定についても必ずしも必要なわけではありません。

(3)犯人の処罰を求める意思表示

 犯罪事実の申告にとどまる被害届とは、犯人の処罰を求める意思表示の有無が異なる点で違います。

4 告訴の方法

 告訴の手続は、「書面または口頭で行う」とされていますが、通常は書面(告訴状)を提出して行います。口頭の場合は、告訴を受けた者が告訴調書を作成します。警察官または検察官に直接行われることが前提とされており、電話やメール等の手段を用いたものは認められません。

 もっとも、実務上は、告訴の形式上の要件不備等が原因でなかなか告訴を受理してもらえないというのが現実です。

 告訴期間等の問題もありますので、あらかじめ刑事事件の経験が豊富な弁護士に相談されるとよいかと思います。