こんにちは。刑法上にはいろんな犯罪が成立しうるのですが、今日はどんなことをすると器物損壊罪(刑法第261条)が成立するのかについてお話したいと思います。

 刑法第261条(器物等損壊罪)には、

「前三条に規定するもののほか、他人のものを損壊し、又は傷害したものは三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

と規定されています。

 他人の持ち物を故意に(わざと)壊してしまう行為は、本罪に該当するであろうと皆さん予測がつくかと思います。では、それ以外の場合で本罪が成立する場合とは、どんな場合でしょうか?

 「損壊」とは、物質的に物の全部、一部を害しまたは物の本来の効用を失わしめる行為をいうと定義されます。

 裁判例を見てみると、例えば、争議手段として会社事務所の窓や扉のガラスに選択糊でビラを60枚貼り付けた行為は、「窓ガラスや扉のガラスとしての効用を著しく減損するもの」として、器物損壊罪の成立を認めています(最決昭46年3月23日)。窓ガラスを割ったり壊したりしていなくても、本来のガラス窓の効用(透明で外の様子を見て取る事が出来る)が、大量のビラを貼り付けられるとこで著しく害されるということですね。

 また、最近の裁判例で
 コンピューターウイルスファイルをネットワーク上に公開し、これを音楽ファイル等と誤信した被害者に受信、実行させることで、同人のパソコン内蔵のハードディスクの読出し機能と書き込み機能を容易に現状回復が困難な状態にすれば、ハードディスク本来の効用が害されたといえ、ハードディスクは「損壊」されたものと認められる(東京地判平3.7.20)

 というものがあります。なかなか興味深いです。