前回、いわゆる違法ダウンロードについてご説明しました。
 今回は、その関連問題についてご説明します。

 インターネット上に違法にアップロードされた違法な音楽や動画などのコンテンツをそれと知りつつダウンロードした場合に、刑事処分の対象とされる可能性があることを前回ご説明しました。

 では、youtubeなどの動画を、ネット上で視聴する行為は大丈夫なのでしょうか。
 youtubeやこれに類する動画サイトの多くは、いわゆるストリーミング再生ないしこれに類する方式で、各人のPCやスマホ、タブレット上で再生されています。サイトに接続すると自動的に、あるいは再生ボタンを押すとこれにより、それぞれ再生が開始されるので、「ダウンロード」と意識することは少ないかもしれません。

 しかしながら、こうした再生方式でも、ほとんどの場合個人のPC等のローカルやメモリーに、キャッシュと呼ばれるファイルが生成され、コンテンツが複製されています。これは、コンテンツを一時的にPC等の上に複製することで、同じデータを毎回ネット上からダウンロードする手間を省き、滑らかに動画等を再生するために行われているものです。

 したがって、ストリーミング再生においてもデータのダウンロード、すなわち複製が行われていることに差異はありません。そうすると、これらもいわゆる「違法ダウンロード」にあたると言い得ます。

 もっとも、これらの保存はあくまで一時的になされるものであり、自動的に順次消去されていくものなので、キャッシュは「複製」ではないとする考え方もあります。しかし、他方で、一時的とはいえ複製は複製だとする考え方も当然にあります。

 そうすると、動画サイトなどをうっかり開いてしまった結果、自動的にストリーミング再生が始まり、違法ダウンロードの「犯人」になってしまった…などということも生じかねません。

 こうした懸念に対応して置かれているのが著作権法47条の8です。
 同条は、
 「電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる。」 としています。

 これは、キャッシュの保存を適法とする条文で、そうであれば、ストリーミング再生を利用しても処罰はされないということになりそうです。文化庁も、そのホームページで、「キャッシュに関しては…第47条の8が適用され、権利侵害にならないと考えられます。違法投稿された動画を視聴する際にコンピュータ内部に作成されるキャッシュについても同様です。」と説明していました(現在は右の説明は文化庁ホームページから削除されていますが、国立国会図書館の次のアーカイブに記録が残っています。⇒「http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1288594/www.bunka.go.jp/chosakuken/21_houkaisei.html」の問10参照。なお、政府広報オンライン(http://www.gov-online.go.jp/useful/article/200908/2.html)でも同様の説明がなされています)。

 但し、上の条文を見ると、「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。」との括弧書きが見られ、この部分の読み方によっては、違法コンテンツについては47条の8は適用されないと読むこともできそうです。

 最終的に法解釈を示すのは裁判所の仕事で、裁判所は文化庁の見解には縛られませんので、文化庁がこう言っているから安心ということはできません。

 インターネットを楽しむ際には、違法なコンテンツが再生等されるサイトにはあまり近寄らないのが賢明かもしれません。