先日、自分の女性器をかたどった立体アート作品を、アダルトグッズショップで展示していた件につき、わいせつ物陳列罪(刑法175条1項前段)で、ある女性が逮捕されました。
女性は自身を芸術家だと称していますし、問題の「立体アート作品」についても、表現の自由を主張しているようです、
今回はこの件について検討してみます。

表現の自由は憲法21条によって保障されています。しかし、同条2項の「検閲」にあたる場合を除いて、表現はすべて同条1項により保障されますが、同時に、一定の規制を受け入れなければならない場合があります。たとえば道路上でデモをする時に、道路交通が完全に遮断されることがないよう、日時や行進範囲を指定されるようなことがありますが、こういった規制はある程度やむを得ないと考えられるでしょう。

わいせつな表現も、表現の自由として憲法21条によって保障されています。芸術にまで昇華されているか否かによらず、表現であればよいのです。
しかし、わいせつな文書や図画が刑法によって制限されていることからわかる通り、わいせつな表現は一定程度の規制を受けます(刑法は憲法の下位法ですから、憲法に反するのであればこの刑法175条は無効ですが、裁判例はそのようには考えていません。)。
あとは「一定程度の規制」がどの程度かということによるのです。

裁判所が、この「一定程度の規制がどの程度か」について明確に解説したことはありませんが、学説で最近、最高裁はこう考えているのではないかと言われているところを一口にいうと、「刑法で規制される『わいせつ』にあたるものは、刑法程度の規制を受ける」ということです。
説明になっているんだかいないんだかよくわからないと思いますが、要は、刑法上の「わいせつ」の定義にあてはまるものに対して行う現行刑法の規制は、憲法が規制を許している範囲内ですので、表現の自由を理由として無効をいうことができないということです。

では、刑法上の「わいせつ」とはどういうものをいうのでしょうか。
最高裁によれば、わいせつとは、「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」をいい、その判断は「一般社会において行われている良識すなわち社会通念を基準とし、当該作品自体からして純客観的に行うべきものであって、作者の主観的意図によって影響されるべきものでない」から、いかに芸術的意図をもった作品でもわいせつ物として規制されることがあり得るとのことです。

つまり、今回の件についていうと、作者本人の意図とは関係なく、女性器をかたどった立体がゴロンとその場においてあるということについて、一般の人が、性欲を興奮/刺激され、かつ恥ずかしいと感じるかどうかが判断されます。
そして判断の結果がYESであるならば、刑法のわいせつ物陳列罪が適用され、NOであれば適用されません。わいせつ物陳列罪が適用されるとき、それは憲法21条が規制を許している範囲内ですから、表現の自由は免罪符にはなりません。

皆さんは、どうお考えになるでしょうか。