「風説の流布」というフレーズは、とくに近時はネット上の情報発信ツールの普及に伴い問題になることが多々あり、ニュース等で耳にする機会も多いかと思います。
そこで今回は、業務妨害罪における「虚偽の風説の流布」の意義についてお話します。
1.「虚偽」
「虚偽」とは、判例によると(少なくとも一部が)客観的真実に反することをいいます。
なお、下級審判決のなかには、行為者が確実な資料・根拠を有しないで述べた事実をいうと解したものが存在しています。この見解によると、断定できない事実を断定したことを「虚偽」と捉えており、断定できると思っていた場合には、故意がないことになります。
2.「風説」
「風説」とは、情報ないしうわさを指します。
情報の根拠・出所が不明であるか否かは問いません。
3.「流布」
不特定又は多数の人に伝播させることをいいます。
行為者が直接少数の者に伝播した場合でも、他人を通じて順次それが不特定又は多数の人に伝播されることを認識して行い、その結果、不特定又は多数の人に伝播された場合も、流布に該当します。
なお、業務妨害罪には、業務を妨害する手段として、①虚偽の風説の流布(刑法233条)、②偽計(同条)、③威力(同234条)、④電子計算機(同234条の2)があり、金融商品取引法158条にも相場操作目的での「風説の流布」を禁止した規定があります。