最近、代議士が国務大臣の職を相次いで辞して話題になりました。
特に、長い棒のついたプラスチック骨組みの両面に丸い紙を貼った物体を配ることの是非が問われ、同代議士が東京地検特捜部に告発されるという事態にまで発展しており、このうちw・・・否、「物体」もなかなか物騒なものです。
この件で問題とされているのは、公職選挙法199条の2から5です。すなわち、「公職にある者(=議員)は、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならない」と定められているところ、この代議士は、自身の選挙区内で、この「物体」を選挙民に配布した。そのため、この「物体」が有価物(価値のあるもの)にあたるか否かが争点となっているわけです。
もし同法違反として起訴されると、最大で禁固1年の刑罰が予定されていますから(公選法249条の2)、あながち軽微な選挙違反ともいえない問題ではあります。
ちなみに、観劇会の関係で指弾された大臣についても、同じく公選法199条の2以下が問題となり得ます。もっとも、こちらについては、政治資金規正法に定める政治資金収支報告書の不実記載も問題となっているようで(政資法12条・25条)、こちらは故意の虚偽記載であると認められると最長で5年以下の禁固刑が定められている、重い法律違反となってしまいます。
さらに、公選法や政資法に違反して有罪が確定した場合、公民権(選挙権や被選挙権)を停止されるという措置を受ける可能性がある旨もまた定めがあり(公選法252条、政資法28条)、政治家にとって選挙違反がいかに致命的であるかは、これら罰則の規定からも明らかです。
ところで、公選法や政資法は、私たち弁護士が仕事をする上ではあまりなじみがない法律なのですが、いざひもといてみると、なかなか面白い(?)規定が並んでいたりします。
たとえば、選挙運動のために休憩所を設けることは禁止(公選法133条)。これに違反すると、30万円以下の罰金が科せられます(同140条1項3号)。
また、選挙後に当選のお礼を述べるために自分の名前を言い歩くことも禁止だそうで(同178条)、これに違反しても30万円以下の罰金を食らう可能性があるとのこと(同145条)。
さらに、選挙にあたって、当選者を予想する人気投票の経過を公表してもアウト(同138条の3)。この違反には、なんと最大2年の禁固刑が待っています(同142条の2)。
いやはや、侮りがたし公職選挙法。
うちわごときで、なんて言っていられないあたりが、公職に就く方々の責任の重さを物語っているのかもしれませんね。