刑事事件で有罪とされるためには、法に触れる犯罪事実があったことは当然として、犯人性が認められなければなりません。犯人性とは、当該犯罪事実を被告人が行ったことです。テレビドラマ等で、被疑者や被告人が「俺じゃない。アリバイがあるんだ。俺が犯人だというなら証拠を見せろ。」と言う場面がよくありますが、これは、犯人性を争っている場面です。
犯人性を立証する責任がある検察側は、犯人性を立証するため証拠を集め、提出します。
犯人性を立証する証拠と言われてどのようなものを思い浮かべるでしょうか・・・・
「目撃証人」・・・ドラマだと目撃証人が出てくることがあります。現実には都合よく目撃者がいることは稀です。わざわざ人目につくところで殺人等を犯すことなどなかなかありません。
「DNA」・・・・DNA鑑定結果が証拠なることも多いでしょう。DNA鑑定が問題なのは、本当に適正に収集され鑑定されているのかです。DNAが一致したから犯人だと感じますが、そのDNAがどう採取されたのかはDNA鑑定自体の正確性とは別問題です。
「面割」・・・・取調室で取り調べを受けている被疑者をマジックミラー越しに被害者や目撃者が確認するという場面が、ドラマではよくあります。被害者や目撃者が犯人の顔を覚えていると思われがちですが、本当に人の顔を覚えているものでしょうか。私はそんな自信はありません。しかも、被疑者として取り調べが行われている人をみて、先入観、偏見を持たずに判断できるでしょうか。実際の捜査では、面割の信用性を担保するべく、無差別に複数の人物の写真を見せ、犯人と思う写真を選択してもらうという方法がよく行われています。
「防犯カメラ映像」・・・・最近では、本当によく出てきます。それだけ、町のいたるところに防犯カメラが設置されているということでしょう。防犯カメラ映像は、鮮明ではなく、写っている人物の着衣、身体的特徴等と合わせて被疑者、被告人との同一性が判断されることが多いでしょう。
その他にも、「凶器が自宅から発見された」「被害物件が自宅から発見された」「犯行現場へ入出場履歴」「犯行動機」「犯行をうかがわせるメール、LINE]等、様々な証拠が犯人性の証拠となります。
以上のような証拠についてどう思われますか。直感的には決定的証拠と感じるかもしれませんが、それぞれ、安易に信用性があると判断できません。
自分が犯人ではないのであれば、これら証拠を徹底的に精査し、犯人性を争っていくことが極めて重要です。