ボクが弁護士になった時代、1996年の話ですが、日本全国の弁護士人口は2万5000人程度でした。戦後に司法試験が始まって、約50年かけて2万5000人の弁護士人口に達したんです。

 ボクが司法試験の勉強を始めた頃の年間合格者数は約500人。合格した1993年の合格者数は約700人でした。

 今は、年間で2000人以上が合格します。

 なんでこんなことをブログに書こうと思ったのかと言うと、最近の若い弁護士さんや司法修習生を見ていて、「考えが甘いなあ…」と感じたからです。というか、何も考えていないのではと思いたくなってきます。

 合格者500人時代の場合、弁護士人口を2万人増やすのに何年かかるでしょうか(裁判官や検察官になる人、また死亡する人や弁護士会から除名される人などは、議論を単純化するため、無視します)。

 実に、40年もかかるんです。40年も先の話なら、ボクなんか引退しているか、下手すればあの世かもしれませんよ(笑)。

 でも、年間2000人も合格すると、どうなるか。わずか10年で2万人増加するんです。たった10年ですよ!若い弁護士さんや修習生の皆さん、10年後、まだまだ余裕で弁護士してますよね。弁護士になって10年なんて、あっという間ですよ。たった10年で弁護士人口を倍増させてしまう時代なんです。

 ボクが弁護士になった時代では考えられなかったような事態に直面しているんです。

 しかも、ボクが弁護士になった頃でさえ、東京などの大都市圏では、弁護士が飽和状態だと言われ、ひとりで独立するのは難しい、独立したいなら友人の弁護士を何人か集めて独立するか、田舎に行かないとダメだ、と言われていたんです。

 ところが、です。最近、弁護士になったばかりの64期の弁護士と食事する機会があったんですが、研修所のクラスメート約70人のうち、すでに退職した弁護士が二桁代だというのを聞かされて驚きました。弁護士になってまだ6ヶ月程度です。ボクみたいに個性が強く、1年目からボスに食ってかかるような生意気な性格でも、同じ事務所で3年間勤務弁護士をしていましたけど(笑)。

なので、若い弁護士さんや、特にこれから弁護士になる修習生の人に微力ながら助言したいです。

1 就職先はしっかり考えてきめましょう。結婚と同じくらい重大な意思決定だと思ったほうがいいです。6ヶ月とか1年で辞める事務所なら、最初から行かない方がいい。6ヶ月、1年で離婚するような相手と結婚するんだったら、最初から結婚しないほうがいいのと同様です。

2 今は就職難の時代ですから、みんながみんな、働きたい事務所に就職できるわけではないのは分かります。でも、ひとたび就職した以上、第一志望の事務所に就職したつもりで、仕事に向かいましょう。妥協して結婚相手を選んだからといって、ブルーな気持ちで結婚生活を送るのは相手に対して不誠実だと思います。そんな結婚生活は長続きしませんよ。仕事も同じだと思います。

3 本気で独立したいなら、ちゃんと考えて計画を立てましょう。ボスを気に入らないから独立…ではなく、独立するのに必要な修行年数は何年か(ボクが弁護士になった頃、東京の場合、独立までに5年は必要だと言われていました)、独立する上で必要なスキルは何か、しっかり分析して弁護士らしい計画を立てましょう。その上で、勤務弁護士としての修業に励みましょう。


 ボクたち弁護士は、「儲からない時代」ではなく、「食えない時代」に突入しています。

 頑張ってください。