ボクシングジムの会長が書いた本ですが、あくまでもビジネス書です。
ボクシングジムの選手の育て方をビジネスに活かそうというコンセプトの本です。
本のタイトルの通り、天才肌のエリート・ボクサーだけが世界チャンピオンになるわけではないそうです。才能に恵まれているのに潰れていく選手がいたり、努力でチャンピオンベルトをものにした選手もいたりなど、ビジネスにも参考になるような、大変示唆に富む本でおもしろかったです。
共栄ジムで育てた世界チャンピオンの中で最も印象深かったのは、佐藤洋太選手です。
彼はスケボーが大好きな入れ墨ボクサーで有名ですが、独自の練習理論を持っているそうです。それは、「スパーリングのみがボクシングの技術を向上させる」という考え方だそうです。
金平会長曰く、佐藤洋太選手は、「サンドバッグを打つ練習には、何の意味もない」などと発言したり、「ロードワーク(走り込み)がそんなに大事ならば、オリンピックのマラソン選手がプロボクサーになればいい」などと発言するなど、大変変わり者だとか…。
でも、この話を知って、ボクは目から鱗でした。
かつて、何かの本で陸上の小出監督が「100年先の練習をすれば、金メダルを取れる」と書いていたのを思いだしたんです。
小出監督曰く、100年前のオリンピックの世界記録って、現代のインターハイの記録よりも遅いそうです。
人間の身体能力が100年前と今とで違うとは思えません。
違うとすれば、おそらくトレーニング方法だと思います。
スポーツ科学や運動生理学などがどんどん進歩して、トレーニング方法もどんどん科学的・合理的になっていくはずです。
だから、常に過去の記録は破られていく。
やっぱり、頭のいい人って、自分の頭で考えるんですよね。
「なんでサンドバッグを叩くんだろう」
「ボクシングはスタミナが大事。でも、だからといって、なぜ走らなければいけないんだろう」
こういった素朴な疑問は、科学的・合理的なトレーニングを考案する際のヒントになると思うんです。
例えば、ボクシングジムでは、よく練習生が縄跳びを跳んでいる光景を見かけますが、あれはどうしてやるんですかね。
シャドー・ボクシングもそうです。仮想の敵を想定して、一人でパンチをくり出す練習をするくらいなら、マスボクシングのほうが生身の人間が相手です。もっと、リアルで練習になるのでは。
こうして考えると、ボクシングの練習方法でも、かなり改善の余地がありそうです。
特に、ボクの場合、もう若くないわけですから、ボクシングが上手になるためには、100年先の練習方法を考えなければならないと思いました。