先日、その本を読んだのですが、大変参考になりました。
その本は、要するに”失敗から学ぶこと”の重要性を説いているのですが、柳井さんの今日の成功が、多くの失敗経験の上に成り立っていることが分かり、彼のこれまでのご苦労が伝わってきます。
でも、この本は、読み方を注意しないと、ミスリードされてしまう危険があると思いました。
失敗から”学ぶこと”は、失敗した場合にはとても大切なことだと思うのですが、それよりももっと大事なことは”失敗しないこと”だと思います。
というのは、失敗から多くの教訓を学べるとしても、その失敗が命取りになる場合も少なくないからです。
もし車にはねられたら、同じことが起こらぬようにその失敗から学ぶべきですが、その交通事故で命を落としてしまったら、何の意味もありません。交通事故に遭遇したら、そこから”学ぶこと”は大事ですが、本当は交通事故に遭わない方がよいのです。
ここを勘違いして、失敗を恐れずに何でもチャレンジ…なんて軽いノリで行くと、思わぬ大火傷をして、最悪の場合命を落とします。まあ、ビジネス・シーンで言えば、クビですね。会社に大きな損害を与えたら、さすがに会社も「まあ今回はしようがない。次回頑張りなさい」というわけにはいきません。
もっとも、確かに失敗には程度の問題ということもあります。
大きな失敗はやばいけど、小さな失敗であれば命取りにはならないではないか、その小さな失敗からの学習の積み重ねが、自分の成長の大きな糧になるのではないか…。
正論です。
しかし、多くの場合(常にとは言いません)、小さな失敗の場合、そこから学び取れる教訓も”小さい”と思います。些細な、取るに足らない失敗は、極論を言えば、失敗に当たらないとも言えます。
やはり九死に一生を得たような、大きな緊張感を伴う失敗だからこそ、そこから得られる教訓も大きいし、人生で貴重な経験となるのではないでしょうか。
このように書いてしまうと、恐くて何も大きな事に挑戦できないではないか、と言われてしまいそうですが、その通りです。多くの人は、ここで行動が萎縮してしまい、結局何もできなくなるわけです。
ここで、成功する人とそうでない人の器が分かれるのだと思います。
成功者の多くは、失敗を恐れずに大きなことにチャレンジしているわけではなくて、”失敗を恐れながら”大きなことにチャレンジしているのではないかと思います。これには大変大きなストレスが伴います。
したがって、成功者が行動に移す際に常に考えているのは、
1,どうすれば失敗の確率を下げることができるか。
2,失敗してしまった場合に、どうすればその損害を最小限にできるか。
というリスク・マネジメントではないかと思います。
そうすることによって、失敗が命取りにつながる危険を回避し、かつそこから多くの教訓を得て次に活かすことができるんだと思います。