皆さんこんにちは。
今回は、裁判例の紹介をしたいと思います。紹介する裁判例は横浜地裁平成23年10月25日(自保ジャーナル1861号)です。
この事件では、原告は交通事故により10級11号の後遺障害を負いました。原告は、会社の営業社員として年800万円の収入があったとして逸失利益を求めました。
しかし、原告の会社では、未公開株の販売をおこなっており、このような業務を適法に行うことが可能なのかが問題になりました。裁判所は以下のように判断しました。
原告が勤務する会社は、証券業の登録を受けていないにも関わらず、一般投資家への投資勧誘が禁止されている未公開株を営業員を使って組織的に販売していた。同社は、未公開株につき、近く上場が確実であって、将来上場された場合には、転売して多額の利益が得られるなどと勧誘して、これを不特定の個人客に販売していたが、実際には、上場が予定されているわけでもなく、上場できるような内容の会社であるかも分からない会社のものであったが、これを正当な販売価格を大幅に上回る高額な金額で売却していた。同社は、平成19年3月初旬には顧客に対し廃業した旨通知した。そして、これら一連の経過により同社が行った未公開株の販売は詐欺に該当すると判断されて、顧客らを原告とする損害賠償請求訴訟において賠償金の支払いを命ずる判決を受けた。
原告の同社からの収入は直ちに違法収入とまではいえないとしても、継続的な収入として期待できる性質のものとはいえず継続的に得られたとの蓋然性は認められない。(しかし、原告は)他に外交員報酬の仕事でも500万円程度の収入を得られていた蓋然性が高いと認定した。
このように、裁判所は違法行為を行う会社からの収入は直ちに違法収入とまではいえないとしても、継続的な収入として期待できる性質のものとはいえず継続的に得られたとの蓋然性は認められないとしました。
この裁判例は事例自体として非常に興味深いと思い紹介させてもらいました。何かの参考になればと思います。
それでは、また。
弁護士 福永聡