こんにちは。
 今回は、示談契約後に予測しえない後遺障害が発生した場合についてお話したいと思います。

 一般に、示談書には「被害者は加害者に対して、本件に関するその余の請求を放棄する。」といった条項(放棄条項)や、「被害者と加害者は、本件事故に関し、本示談書に定めるほか何らの債権債務のないことを確認する。」といった条項(清算条項)が入っており、示談成立後には、示談書に書かれていない請求は出来ないことになっています。後日の紛争防止が、示談(和解)契約の目的だからです。

 しかし、現実には、示談成立後、予測できない後遺障害が発生することがあります。

 この場合、放棄条項や清算条項の他に、「将来、本件事故が原因で後遺障害が発生したときは別途協議する。」との条項があれば、さほど問題はありません。被害者は、文言通り、保険会社と協議の上、別途後遺障害に関する賠償を請求すれば良いからです。

 これに対し、このような条項がない場合、3月21日付のブログで紹介した「和解の確定効」により、被害者は、原則として、後遺障害を原因とする損害賠償はできないことになります。

 しかし、示談時には予想できなかったにもかかわらず、原則論を徹底して、一切被害者救済をしないというのは、あまりにひどいのでは?という気がしますよね。
 このことを踏まえ、裁判例の中には、示談時予測しえなかった後遺障害が発生した場合、例外的に追加の損害賠償請求を認めるものがあります。
 その根拠(法律構成)については、上記放棄条項を例文と捉えその効力を否定するもの、示談の前提となっていた事実に錯誤があるとして錯誤無効を認めるもの等、様々です。

 ただし、例外的に請求が認められるためには、被害者において、当該後遺障害が交通事故を原因として生じたものであること(事故との因果関係)を立証しなければなりません。また、示談時に予想外の症状でなくてはならず、元々存在した症状が悪化したという程度では、請求は認められません。

 以上のとおり、示談契約書にサインしてしまったからと言って、一切損害賠償請求ができなくなるというわけではありません。ただし、請求が認められるために注意すべき点もありますので、本件に関する悩みをお持ちの方は、一度弁護士に相談してみると良いと思います。