こんにちは。今回は、逸失利益のうち、生活費控除についてお話ししたいと思います。
交通事故により、被害者が死亡してしまった場合、逸失利益(もし被害者が事故に遭わなければ、これから先、当然得られたであろうと予想される収入等の利益)が損害賠償として認められます。しかし、被害者は、死亡しており、被害者自身の生活費はかからないことから、逸失利益を算出する際、生活費相当分が控除され、これを生活費控除といいます。
生活費控除は、同一原因によって損害と利益が生じた場合に、利益を損害額から控除して賠償額を決定するという、損益相殺の考え方から、判例も一貫して認めています。
生活費控除率は、損害賠償額算定基準(通称「赤い本」といいます。)上巻に記載されています。赤い本によると、独身男性は、50%とされています。一家の大黒柱(多くは男性だと思われます。)であった場合で、被扶養者が1人の場合は40%、2人の場合は30%が控除されます。実際、一家の大黒柱であるお父さんのお小遣いは、独身男性より少ないことが多いのではないでしょうか。扶養すべき家族が多い程、自分の生活費が少額になるというのは、理由のあることですし、また、実際、控除率が低くなれば、遺された被扶養者の生活を助けることになりますから、被扶養者の有無、人数によって、控除率が変わることは、妥当であると思われます。
生活費控除率は固定的なものではなく、具体的な状況も加味して判断されます。例えば、判例では、事故時は独身であったが、1週間後に、子どものいる女性と結婚する予定であった男性の生活費控除率を30%としたものがあります(大阪地判平成17.3.11)。
一方、女性の生活費控除率は、主婦、独身、幼児にかかわらず、一律30%とされることが多いようです。もっとも、男女の収入差が縮まり、共働きが通常になってきている現代では、見直しを迫られるのかもしれません。