1 はじめに
皆様、こんにちは。
今日は、自転車の事故について考えてみたいと思います。
自転車は、法律上、「軽車両」に該当し(道路交通法(以下、「法」といいます。)2条1項11号)、「車両」(同項8号)として扱われており、車両の灯火(法52条)や酒気帯び運転等の禁止(法65条)など、四輪車や単車(自動二輪車、原動機付自転車)と同様の法的規制に服することになります。
しかし、路側帯を通行することができること(法17条の2)や並走が禁止されていること(法19条)など、四輪車や単車と異なった自転車特有の法的規制にも服するという特色があります。また、自転車の性質上の特色として、四輪車や単車と異なり、免許が不要で、交通法規に無知な児童等も運転すること、自転車の速度としては、通常、四輪車や単車の速度と歩行者の速度との中間になることなどの特色があります。
このような特色から、例えば、自転車と四輪車との事故における基本的な過失割合(もちろん事故態様等によって個々の交通事故における具体的な過失割合は変動します。)について、基本的には、単車と四輪車との事故よりはなお自転車に有利に考え、ただ、歩行者と同視する程度まで自転車に有利に考えないとされています。
2 自転車と四輪車の事故の基本的過失割合
では、交差点における直進自転車と直進四輪車の出会い頭事故という事故態様を想定して基本的な過失割合をみてみましょう。
例えば、直進自転車の対面信号が赤、直進四輪車の対面信号が青である場合、基本的な過失割合としては、80(自転車):20(四輪車)とされています(別冊判例タイムズ38号の図【236】参照)。
ただし、この基本的な過失割合は、上記のように、自転車の速度が四輪車・単車の速度と歩行者の速度との中間になること(目安としては、時速15km程度と思われます。)を前提としています。
3 高速度の自転車と四輪車の事故について
そのため、自転車の速度が原動機付自転車に匹敵するような高速度(目安としては、原動機付自転車の制限速度である時速30km程度と思われます)で走行していた場合には、上記2とは異なった基本的な過失割合を考えることがあります。近年、自転車といっても、いわゆるママチャリではなく、ロードレーサーやロードバイク等のスポーツタイプの自転車に乗る方も増えています。このようなスポーツタイプの自転車では、普通のママチャリ等の自転車の速度を大幅に超えた、原動機付自転車等の車両に匹敵する速度で走行することが可能です。
このようなスポーツタイプの自転車に乗り高速度で走行中に事故に遭った場合、単車と四輪車の事故よりも自転車に有利に考える理由に乏しいとして、単車と四輪車との事故における基本的な過失割合を参考にすることがあります。
単車と四輪車との事故における基本的な過失割合を参考するとなると、直進単車と直進四輪車の出会い頭事故で直進単車の対面信号が赤、直進四輪車の対面信号が青の場合、100(単車):0(四輪車)とされています(別冊判例タイムズ38号の図【161】参照)。
そのため、上記2とは異なり、基本的な過失割合として、100(自転車):0(四輪車)として考えられてしまう可能性があります。
4 最後に
今回は、自転車の特質に着目して、自転車の走行速度の差からくる基本的な過失割合の考え方の違いをみてきました。
もちろん、走行速度だけでなく、信号機により交通整理が行われているかどうか、対面信号の色は何色か、等の事故状況・事故態様によって、基本的な過失割合も変動しますので、事故状況を把握することの重要性について少しでも知っていただければと思います。