1審で車全体の再塗装費用が認められた理由としては
「この塗装は、下地処理や色むらをなくすための重ね塗り等相応の技量を要しキャンディー塗装は、フレークの凹凸をなくすためにコート剤を重ね塗りしてから表目を研磨紙その上からキャンディカラー塗料を重ね塗りして色合いを出してゆくと言ったさらに高度の技量を要する。」としたうえで、非補修部分と同様の色調乃至光沢を部分的に再現することや擬似的な部分塗装とぼかし塗装などの技法を組み合わせることによって補修部分と「非補修部分との色調乃至光沢の違いを解消することは技術的に極めて困難として、車全体の再塗装の費用を認めたのです。
しかし、控訴審では、塗装メーカーの技術資料等によれば、キャンディ塗装の補修は原則的に部分塗装(ブロック塗装)とされ、一般的に多用されている3コートパール塗装の補修技術にほとんど類似すると認定し、フレーク塗装についてもフレークの粒子が小さいほどパール塗装と近似して識別困難になるところ被害車両の粒子は小さいとしました。その上で、同じ色でも面が切り替われば見え方が変わることを踏まえれば、最大に見ても同一面である左側面の全範囲を塗装することで足りるとし、補修費用額は合計35万7000円と判断をしました。
車両損傷については、「修理が相当な場合、適正修理費相当額が認められる。」のですが、本件は全塗装がこれに当てはまるか争われた事案でした。