1.因果関係

 前回ご紹介した認定基準により、非器質性精神障害が発生していると認定されたとしても、加害者に損害賠償を請求するためには、その発症が事故によって発生したと言えなければなりません。つまり、事故と損害の間に因果関係があることが必要です。

 ここでいう因果関係は、単に事故がなければ発症しなかったというだけでは足りず、事故からそのような症状が生じることが相当といえなければならないとされています(相当因果関係)。

 もっとも、非器質性精神障害は、同じような事故の体験をしたからといって誰もが発症するものではなく、事故以外のストレスや遺伝的要素、被害者の性格等の要素も合わさって発生しうるものです。

 したがって、非器質性精神障害は、事故と障害の因果関係の有無が問題となりやすく、もっぱら他の原因によって発症したといえるような場合には、相当因果関係がないという判断がなされることがあります。

2.因果関係あるかどうかの認定方法

 裁判所は、因果関係を認定するにあたって、①精神障害や症状の内容、②精神症状の発現時期、精神科等通院開始時期、③事故以外のストレス因子、既往症の有無、その影響力の程度、④事故態様、傷害の程度について特に着目しているとされています。

 もっとも、一律に因果関係の有無を判断することが困難な場合もあり、そのような場合に裁判所は、「○割の限度で相当因果関係を認める」とか、現存する後遺障害からすれば高い等級の後遺障害が認められうるようなときに、より低い後遺障害の限度で相当因果関係を認めるなどとして、妥当な解決を図ることがあります。

3.次回

 次回は、「素因減額」の視点からみた非器質性精神障害について検討してみたいと思います。

参考文献
判例タイムズ No.1377 17頁以下、同No.1379 11頁以下

弁護士 福留 謙悟