皆様こんにちは。弁護士の菊田です。

 今回は、物損についての一般的なお話をしようと思います。

 物損については、車の修理費用を思い浮かべられる方が多いかとは思いますが、必ずしも、請求できる費用は修理費用のみではありません。そこで今回は、物損を考えるにあたって、どのようなものが物損として認められるのかを、いくつかの場面を想定して、説明したいと思います。

① 修理が可能な場合

 この場合は、修理に必要な限度で、実費を全額請求できます。修理が未了であっても、修理費相当額を請求できることはあります。
 ただし、修理が相当なものでない場合(例えば、板金修理の方が経済的であるにもかかわらず、部品取替えを行った場合等)には、実費すべてを請求することはできません。
 修理費が、車を買い替える費用(車の時価額+買替諸費用)を上回る場合(この場合を、経済的全損と言います)には、車の事故時における時価相当額と車の売却代金の差額の賠償を求めることができます。

② 修理が不能である場合

 車に重大な損傷があり、買替をすることが社会通念上相当と認められる場合には、車の事故時における時価相当額と車の売却代金の差額の賠償を求めることができます。

③ 修理はできるものの、売却価格が下がる場合

 自動車を修理してもその外観や機能に欠陥が生じた場合や、事故歴によって商品価値が下落することが見込まれる場合には、その価値の下落分が損害として認められます。修理費用の20~30%程度の額が損害として認められることが多いです。

④ 代車を使用した場合

 代車使用料は、相当な修理期間中または買替までの間、レンタカー等の代車を使用した場合に、損害として認められます。

 代車使用料は、代車を使用することの必要性が認められないと損害と認められません。
 また、自動車のグレードに関しても、必ずしも事故車両と同クラスの車について代車使用料が認められるわけではありません。多少クラスの落ちる自動車でも代車としての機能を十分に果たしうると認められるような場合には、事故車両と同クラスの車について代車使用料が認められる可能性は低いと言えます。

⑤ 事故にあった車両が営業用車両であった場合

 営業車の場合には、相当な買い替え期間中または修理期間中の休車損の賠償が認められます。

⑥ その他の費用

 雑費として、レッカー代、時価査定料、交通事故証明交付手数料、配車料等が損害として認められます。

 なお、物損に関する慰謝料は、原則として認められません。ただし、その物に対する愛情が強かったり、その物を失うことにより被害者の精神的平穏を強く害するような特殊なケースでは、物損に対する慰謝料も、認められる可能性はあります。

 このように、ひとえに物損といっても、様々なパターンが考えられます。もっとも、どの場面においても共通しているのは、損害の賠償は必要かつ相当な限度でしか認められない、ということです。もし交通事故の加害者になってしまって、被害者から不相当な額を請求されていると感じたら、1度ご相談ください。