交通事故の被害者は、多くの場合、加害者が契約している任意保険会社の担当者とやり取りすることになりますね。保険会社の担当者は、毎日、交通事故の交渉を行っていて、交通事故の交渉のプロなので、多くて一生に数回程度しか事故を経験しない被害者が、保険会社の担当者と交渉するなんて無茶だといわれます。そこで、どのようなことを保険会社の担当者がいってくるかを一つお話ししようと思います。

 交通事故でよく争いになるのが、過失割合と損害額です。まず、治療費や慰謝料等の損害額合計を算出し、そこから過失相殺して実際の示談金が決まります。すると、過失割合で有利に交渉しても、損害額が低ければ示談金の額は低くなります。

 この点を利用して、保険会社の担当者が、まるで被害者のことを思って、過失割合を被害者に有利にしているように話してくることがあります。

 「すみません。今回の事故の基本的な過失割合は50:50ですが、10:90とさせていただきます。つきましては、慰謝料は〇〇円ですので、〇〇円で示談していただけないでしょうか。」

 「あー、こちらの言い分も聞き入れてくれる担当者にあたってよかった」と安心してはいけません。営利企業である保険会社は甘くはありません。表向きは申し訳なさそうに話しながら、裏では舌を出していることが多いでしょう。

 このような保険会社の担当者も被害者を騙そうと思っているわけではなく、任意保険会社のマニュアル、基準通りに対応しているだけなのかもしれません。任意保険会社の基準通りもしくは基準以下で処理すればいい人事評価がされる以上、だましてでも成績を上げたいと考えているのかもしれません。

 ただ、保険会社の担当者も人間なので、きちんと合理的に事情を説明すれば被害者のことを考えてくれる担当者がいることも付け加えておきます。