事故のために、関節が動かない、あるいは動きにくくなる場合、可動域制限の問題となります。可動域は各関節でいろいろありますから、今回は一番ミクロなところとして、指関節についてお話させていただきます。

 衝突のはずみで指を挟んでしまうなど、事故のために、指がもともと動いていた通りには動かなくなってしまったとき、それが後遺障害として認められるかどうかは、「どの指が」「何本」「どの位置で」「どの程度」おかしくなったのか、というところにかかってきます。

 指の関節は、親指の場合には爪に近い方から、IP(第1)、MP(付け根)関節と呼ばれ、親指以外の場合には、爪に近い方から、DIP(第1)、PIP(第2)、MP(付け根)関節と呼ばれます。
これらの関節が、何もない場合に比べてどの程度曲がったり反ったりできるのかが可動域制限の問題であり、後遺障害として認定されるかどうかの問題です。

 まず、直前の関節から指をまっすぐにのばしている状態を0°とします。 ここから、関節を内側に曲げるときは、「屈曲」の動きです。+の数値が高まるほど、内側によく曲げることが出来るということです。関節を外側に反らせるときは、「伸展」の動きです。+の数値が高まるほど、よく反らせることが出来るということです。

 たまに、「屈曲:90°、伸展:-20°」などと記載してある後遺障害診断書を見ますが、これはおそらく指をいかに反らせようとしても内側に20°曲がってしまう、という鷲手のような状況なのだろうと理解しています。しかし、特に鷲手のような状態でなく、手をまっすぐにできるのであれば、伸展は0°でかまいません、というより、伸展は0°程度が標準です。
 指の関節が柔らかい人で、押せば指先が反って手首につくような人がいますが、このような人は、伸展はプラスの方に大きな数値でなくてはいけません。しかし、後遺障害診断書を書く機会の少ない医師だと、この状態を誤って伸展マイナスと記載してしまう場合がありますので、患者さんの側でもご注意ください。

 可動域は、屈曲と伸展の和によって表します。
 先ほどの、「屈曲:90°、伸展:-20°」の人であれば、90°+(-20°)=70°ですから、可動域角度は70°です。

 そして、この角度が、けがをしていない方(健側・けんがわ)の手の指、あるいは参考角度と呼ばれる標準の角度からどれだけずれているか、これが可動域制限の問題です。
 たとえば、右手人差し指の第二関節について、事故によって非常に動きが悪くなり、曲がりにくくなったとしましょう。

 人差し指は、示指と言います。右手示指PIP関節の可動域が「屈曲:40°、伸展:0°」である一方、左手示指PIP関節の可動域が「屈曲:100°、伸展:0°」だとすると、動きが悪い方の指の可動域角度は、40°+0°=40°ですから、健側の可動域角度100°+0°=100°の2分の1以下ですね。この場合、「1手の示指の用を廃した」として、後遺障害等級12級と認定される可能性が高いです。

 今のは一例ですが、小指だったらどうなる、親指だったらどうなる、2分の1より大きい数値が出た場合はどうなる、2本以上の指について動きが悪い場合はどうなる、というのは細かく決まっています。もちろん、指以外についてもかなり細かく定まっています。
 ご自分の場合はどうか、何か事故に遭われてから前のように体が動かないなど、不安に思われることがありましたら、ぜひご相談ください。