こんにちは。
今回は、無保険車傷害保険によって填補される損害の範囲について判断した裁判例(東高判平成16年7月14日・自動車保険ジャーナル1563号)をご紹介します。
事案について
ご紹介する争点に関する部分のみ事案を紹介します。
本件は、無保険の自動二輪車を運転するAに衝突され、後遺障害等を負ったXが、夫らと共に、夫が契約する無保険車傷害保険の保険者Yに対し、保険金の支払いを求めた事案です。
本件では、Ⅹらが保険者に対し請求できる損害の中に、ⅩらがAに対して別件訴訟を提起した際の弁護士費用が含まれるかが争われました。
1審判決はⅩらがAに対して提起した別件訴訟の弁護士費用について、ⅩらはYに請求できないと判断しました(本件では他の争点もありますが割愛します)。
双方控訴。
裁判所の判断
本判決は、ⅩらがAに対して別件訴訟を提起した際に要した弁護士費用中、事案の難易等諸事情を斟酌して相当と認められる範囲のものは、YがXに保険金を支払うべき損害に当たるとしました。
分析
はじめに
本件の請求の根拠となった無保険車傷害保険では、「当会社が保険金を支払うべき損害の額は、賠償義務者が被保険者またはその父母、配偶者もしくは子が被った損害に対し法律上負担すべきものと認められる損害賠償責任の額によって定めます」との定めがありました。
一審判決
1審判決は、別訴の弁護士費用をAが損害賠償責任を負う不法行為と相当因果関係にある損害に該当すると解しつつも、保険契約の条項において、被保険者が他人に対する損害賠償請求権を保全又は行使に必要な手続をするためにYの同意を得て支出した費用は損害の一部として無保険車損害保険金の支払の対象となること、及び、他人に損害賠償請求ができる場合には、その権利の保全又は行使に必要な手続をすることが定められていることを根拠に、保険会社の同意を得ない手続費用は、「賠償義務者が被保険者…に対して法律上負担すべきものと認められる損害賠償責任の額」からは、これを除外したと解するのが相当であるとして、弁護士費用の支払い請求を否定しました。
本判決
本判決は、Yが別訴の弁護士費用の支払を拒むための根拠とする保険契約の条項が保険金として支払われる損害賠償の額を確定する内容を有する規定や本件事故と相当因果関係に立つ損害として加害者が法律上の損害賠償責任を負担すべきものについて、保険者が保険金を支払うことを免れる解釈を導く根拠となるものとは解せられないとして、Ⅹらの別訴の弁護士費用の請求を認めました。