交通事故により、後遺障害が残ってしまった場合、事故の被害者としては、後遺障害の程度に応じた「逸失利益」の請求を行うことができます。
逸失利益とは、後遺障害によって、本来であれば受け取ることができたにもかかわらず得られなかった経済的利益を意味します。要は、後遺障害によって、従前どおりに働けなくなったことを金銭評価して損害として認めるものです。
逸失利益算定の基礎収入は、原則として事故前の実収入額によるものとされています。
では、幼児・学生などの収入がない人や、まだ年齢が若く、収入が多くない人はどうなるのでしょうか。
まず、幼児・学生については、原則として、学歴計・全年齢平均賃金を基礎として逸失利益の算定を行うこととされています(大学生または大学進学の蓋然性が認められる人については、大卒の全年齢平均賃金を基礎とする場合もあります)。
次に、年齢が若く収入が多くない人については、どうでしょうか。この場合、上記のような原則どおりに、事故前の実収入額を基礎に逸失利益の算定を行うと、逸失利益が極めて少なくなってしまう場合があります。
そこで、若年者の場合には、事故前の実収入額が全年齢賃金よりも低額であったとしても、①概ね30歳未満の場合であって、②年齢、現在の職業、職歴、実収入額と年齢別平均賃金との乖離の程度及びその原因等を総合的に考慮して、将来的に生涯を通じて学歴計・全年齢平均賃金を得られる蓋然性が認められる場合は、学歴計・全年齢平均賃金(又は学歴別平均賃金)を基礎とするものとされています。
どのような場合に、蓋然性が認められるかは、事案によって異なりますが、30歳未満の若年者の場合、学歴計・全年齢平均賃金を基礎として、保険会社との示談がまとまるケースが多いように思います。