交通事故に遭って後遺障害が残存した場合、保険会社(加害者)に対して、後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料の損害費目を請求することができます。このうち後遺障害逸失利益については算定方法があり、以下の計算式によります。

 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

 「基礎収入」は、基本的には事故前年の実収入によります。

 「労働能力喪失率」は、基本的には後遺障害等級1級の100%から14級の5%まで等級ごとに喪失率が設定されていて、その喪失率に従うことになります。

 「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」とは、将来分の損害を一括して支払ってもらうため、単に労働能力喪失期間をかけてしまうと、支払額が過大になってしまうので、中間利息というものを控除するのですが、その中間利息控除するための数値です。なお、労働能力喪失期間は、基本的には症状固定時の年齢から67歳までの期間となります。

 具体例を挙げて説明すると、年齢が37歳で、収入500万円の人が後遺障害14級の後遺障害を負った場合、後遺障害逸失利益は、以下のようになります。

500万円 × 5% × 15.3725(労働能力喪失期間30年)
384万3125円

 しかし、保険会社は、労働能力喪失期間を制限することが多くあります。特に、神経症状に関する後遺障害の場合、2、3年に制限して、これに対応するライプニッツ係数で算定した金額を提示してくることが頻繁にあります。

 上記の例で言うと

500万円 × 5% × 1.8594(労働能力喪失期間2年)
46万4850円

 このように300万円以上金額が違ってきます。等級が上がればさらに金額の差は大きくなります。

 当然、保険会社も労働能力喪失期間を何年とするかによって、金額が大きく異なってきますので、かなり争ってくる点であります。そうすると、一般の方が保険会社と労働能力喪失期間を争おうとしても、まず、保険会社の主張する労働能力喪失期間を覆すことはできないと思います。

 後遺障害が残ってしまった場合には、ぜひ弁護士に依頼して保険会社と交渉してもらうようにすることをお勧めします。

弁護士 竹若暢彦